新型コロナの感染拡大防止を目的とした自粛要請が解除され、東京ディズニーリゾートなどの大型娯楽施設も営業を再開する7月の上旬からは、ほぼ全業種で経済活動が再開される運びとなります。しかしまだまだ首都圏を中心として連日一定数の感染者が出ており、第2波、第3波到来の不安を感じつつも先行きへの不安をいかに払拭(ふっしょく)していくかが、ビジネス界にとって現下の大きな課題です。いわゆるニューノーマル化をキーワードとした、ウィズコロナ・ステージを迎えたわけです。一つのターニングポイントを迎えた感が強いビジネス界ですが、注目業界、注目企業におけるこれまでに見えたコロナの影響、今後の課題などを総括してみます。
まずここまでで、コロナの影響が最も大きく出ているのは運輸業界です。特に国と国の間を行き来する航空機業界のダメージは、想像を絶する領域にあると言えます。大手の日本航空、全日空で国際線が5月段階で前年比約9割減、国内線も7割減という現状でした。国内線は6月中旬以降回復基調とはいえ、まだまだ先行きの暗さを推察して余りあります。航空会社のつらさは、雇用人数の多さと平均給与の高さに加え、航空機のリース料や整備設備の維持費が膨大であるという、装置産業ゆえの固定費の重荷です。
この航空業界の受難は世界的なレベルで、主要40社1〜3月の赤字幅は2兆円と過去最大を記録し、4〜6月はさらに赤字幅が広がる見通しです。そんな中で既に、豪ヴァージン・オーストラリア航空や国営であるタイ国際航空が経営破綻するという憂き目にあっており、各国の航空会社は戦々恐々としています。現時点で生き残りの可否を握るのは、各国の政府支援の有無です。上記2社は政府から見切られ破綻に至りましたが、ドイツのルフトハンザは破綻確実と言われながら、ギリギリで政府支援を得て何とか生き延びている状況です。
わが国の場合には、業界団体を通じた政府のバックアップを受けた金融機関からの資金調達で、この先1年をメドにした当面のキャッシュフロー確保はできている模様です。しかしながら、国際線を含めた航空業界の需要が2019年度並みに戻るのに最低5年は要するといわれており、長期的観点での抜本的改革は必須です。まず手を付けるべきは事業のダウンサイジング化であり、これがどこまで徹底されるかが今後における航空業界の対コロナ戦略のカギを握っているでしょう。しかしながら航空業界のリストラには、日本航空の破綻・再建の際にも問題となった“物言う”複数の労働組合の存在がネックにならないか、という問題があります。労組のニューノーマル化こそが、航空業界最大の課題かもしれません。
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