セコい値下げで喜んでいる場合ではない、NTTのドコモ完全子会社化ウラ事情5G時代なのに……(4/4 ページ)

» 2020年11月04日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]
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また、「ガラパゴス化」しないか

 具体的に申し上げます。5G、6Gはサービスの点で進化する通信インフラである点が、4Gまでの流れとは異なります。すなわち、将来に先鞭をつけるようなスピード感が雌雄を決することになるのです。さらに5G、6Gは一般消費者を対象としてきた4Gまでとは異なり、ヒトだけでなくモノを対象とするインフラであるがゆえに、顧客を常に拡大させていくというサービス業の視点で新たな技術、サービスの開発と提供を続ける必要があるのです。このような新たなサービスを担うわが国のリーダー企業が、いまだに「お客さま」を「加入者」と呼ぶような組織のままでスピード感をもった顧客創造姿勢での事業展開ができるのか、個人的にはドコモ完全子会社化には不安ばかりが感じられるのです。

ドコモは「官僚組織」に後戻りするのか(出所:同社オンライン記者会見、左からNTTの澤田純社長、ドコモの吉澤和弘社長)

 このように携帯電話料金の値下げという一大臣クラス政治家の人気取り発言が、首相という立場に変わっても状況の変化を顧みることなく主張されることにより、民間企業の組織戦略を左右し業界の公正競争にも影響を及ぼし、ひいてはわが国通信事業の行く末をも左右しかねない事態にまで及んでいるのだということを、正しく認識する必要があると思っています。

 そして、そもそも官僚と半官僚のNTT職員が作り出したガラパゴスなビジネスモデルであるわが国の携帯電話ビジネスの主導権は、政治主導で再び半官僚組織の手に戻り、激しさを増す世界の通信ビジネス競争における競争力を失うことになりはしないのか。目先の携帯料金値下げに惑わされることなく、その行方をしっかりと見据えていかなくてはいけないと思います。

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役

横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時は旧大蔵省、自民党担当として小泉純一郎の郵政民営化策を支援した。その後営業、マーケティング畑ではアイデアマンとしてならし、金融危機の預金流出時に勝率連動利率の「ベイスターズ定期」を発案し、経営危機を救ったことも。06年支店長職をひと区切りとして銀行を円満退社。銀行時代実践した「稼ぐ営業チームづくり」を軸に、金融機関、上場企業、中小企業の現場指導をする傍ら、企業アナリストとしてメディアにも数多く登場。AllAbout「組織マネジメントガイド」役をはじめ、多くのメディアで執筆者やコメンテーターとして活躍中。


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