堀江貴文は、いかにしてゼロから築き上げたのか 「宇宙ビジネス立ち上げの原動力」を聞くホリエモンが仕掛ける「宇宙ビジネス」【後編】(1/5 ページ)

» 2021年04月03日 08時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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 「世界一低価格で便利なロケット」の開発を目指す、北海道大樹町のインターステラテクノロジズ(以下、IST)。2019年5月に観測ロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機」(以下、MOMO3号機)によって、国産の民間ロケットとして初めて高度100キロ以上の宇宙空間に到達した。

 その後、2度目の宇宙空間到達は果たせていないものの、21年は「MOMO」の定常的な打ち上げを目指すとともに、打ち上げコストが1機で約6億円になる超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発も進めている。「ZERO」の開発はISTにとって、ビジネスの成功を左右する社運を賭けたプロジェクトだ。

 ISTは実業家のホリエモンこと堀江貴文氏が創業したベンチャー企業。堀江氏が宇宙ビジネスへの参入に動き始めたのは00年にさかのぼる。その後、国内における民間宇宙開発を目指す組織「なつのロケット団」を結成して、ゼロからロケットの開発に取り組んできた。ISTを設立したのは13年。その6年後に宇宙空間到達を果たしたことになる。

 もちろんその道のりは平たんではなかった。「MOMO」打ち上げの定常化と、「ZERO」によって宇宙の輸送インフラにするとの目標も、実現するには技術力の向上はもちろん、人材、資金もまだまだ必要な状態だ。だが、当初は無謀だと思われたロケット開発は、確実に前に進んでいる。堀江氏はその原動力は「人とのつながり」だと話す。

 ITmedia ビジネスオンラインでは、堀江氏に単独インタビューを実施。前編「堀江貴文に聞く インターステラテクノロジズと民間宇宙ビジネスの現在地」では、「MOMO」と「ZERO」開発の現状と、新会社設立の狙いを語ってもらった。後編では堀江氏が、まさしく「ゼロ」からロケット開発を可能にしてきた背景を聞く。

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)1972年福岡県八女市生まれ。実業家。SNS media&consultingファウンダーおよびロケット開発事業を手掛けるインターステラテクノロジズのファウンダー。現在は宇宙関連事業、作家活動のほか、人気アプリのプロデュースなどの活動を幅広く展開。2019年5月4日にはインターステラテクノロジズ社のロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機(MOMO3号機)」が民間では日本初となる宇宙空間到達に成功した。著書に『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』(SBクリエイティブ)、『非常識に生きる』(小学館集英社プロダクション)など(撮影:KAZAN YAMAMOTO)

宇宙空間到達は「ほっとした」

 ISTが「MOMO3号機」によって、高度100キロ以上の宇宙空間到達に成功したのは、日本の企業が民間資金で開発したロケットとしては初めての快挙だった。「MOMO3号機」に搭載したカメラの映像と、オペレーションをするIST社内の映像は、ISTやホリエモンチャンネルのYouTubeで見ることができる。

 高度100キロに近づくにつれて、97、98、99と、カウントダウンする。100キロに到達した瞬間、「やったー!」と歓声が上がり、スタッフはガッツポーズや拍手で喜びを爆発させた。堀江氏はスタッフとハイタッチをしているが、「いやあ、よかった」と言いながら、どちらかといえば喜びよりも安堵の表情を浮かべているように見える。当時のことを、堀江氏はこう振り返った。

 「ほっとしましたね。これで次の打ち上げもできますから。ロケットの打ち上げはどこまでいっても不確実性が付きまとうので、本当に毎回ドキドキしています」

高度100キロ以上の宇宙空間到達に成功した瞬間、「やったー!」と歓声が上がり、スタッフはガッツポーズや拍手で喜びを爆発させた(ホリエモンチャンネルのYouTubeより)

 ISTはロケットエンジンなどのコアとなる技術を自社で開発。工場や実験場・ロケット射場を整備し、設計から製造・試験・打ち上げまでを一気通貫で行って無駄なコストを下げている。部品もひとつひとつを見直し、時には国産の汎用性のあるものも使用することで、「世界一低価格で便利なロケット」の開発を実現させようとしているのだ。

 拠点を置いている大樹町の協力もあって、本社工場とロケットの射場がわずか8キロの距離にあるなど、開発の環境は充実している。世界のロケット開発企業と比べても遜色ない環境を、ゼロから作り上げてきたのだ。

新社屋の前で集合するインターステラテクノロジズの社員たち(インターステラテクノロジズ提供)
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