堀江貴文は、いかにしてゼロから築き上げたのか 「宇宙ビジネス立ち上げの原動力」を聞くホリエモンが仕掛ける「宇宙ビジネス」【後編】(4/5 ページ)

» 2021年04月03日 08時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

意外なつながりで現在がある

 堀江氏が「なつのロケット団」に加入したのは、前述の通りアニメ制作の話がきっかけだった。さらに、ISTが成長する過程でも、宇宙とは関係ないような人脈から、多様な人たちがつながって参加することになる。

 「IST初代社長の牧野一憲さんと出会ったのは偶然でした。牧野さんはもともと音楽業界の人です。着うたを立ち上げたソニー・ミュージックの知人に、最近ロケットエンジンを作っていると話をしたら、ビクターエンタテインメントで着うたを担当して、富士山麓で一人でロケットエンジンを作っている牧野さんを紹介してもらったんです」

 牧野氏が参加したことによって、ロケット開発は加速していく。堀江氏はライブドア事件で06年に逮捕され、実刑判決が確定した11年に収監されるが、その間も牧野氏が中心となって開発は進んだ。そして、現在のISTを社長としてけん引している稲川貴大氏との出会いも、また偶然だった。

 13年3月29日、堀江氏の出所後初めてとなるロケットの打ち上げが実施された。しかし、ロケットは炎上し、打ち上げは大失敗。このときにボランティアとして参加していた東京工業大学の大学院生が、稲川氏だった。

 稲川氏は大手カメラメーカーへの就職が決まっていた。打ち上げの日は金曜日で、週明けの月曜日が入社式だった。稲川氏が優秀だと聞きつけた堀江氏は、「君はロケットを作りたいのか、それともカメラを作りたいのか」と稲川氏に問う。すると稲川氏は「もちろんロケットです」と答え、なんと入社式当日に内定を辞退してISTに入社した。その翌年、稲川氏はISTの2代目社長に就任し、「MOMO」や「ZERO」開発の先頭に立っている。

 稲川氏のように堀江氏と直接話すことで、ISTに入社した社員は他にもいる。20年からは、トヨタ自動車と連携して、エンジニア2人の出向の受け入れも始めた。つながりは、全て堀江氏が発した言葉からだという。

 「転職をしたい人は、僕の話を聞いている時点で、ロケットの開発に興味があるんですよね。だけど、今勤めている会社を辞めるには不安があります。だから、背中を押してほしいのだと思います。その人の背中を押すためには、どのような言葉が響くのかを考えながら話しますね。言葉の力はあると思います。

 トヨタ自動車からの出向も、ロケットとは別のつながりから決まりました。トヨタと一緒に仕事をしている会社から、トヨタの幹部の方を紹介していただいたのがきっかけです。他にも友人の紹介で、炭素繊維強化プラスチックの成型でトップの会社と連携して、全面改良したMOMOのエンジンのノズルを開発しています。

 投資家の皆さんに関しても、そうですね。10年くらい前にロケットの話をした人からも最近、数億円を投資してもらったケースもあります。ロケットのことを話したことで、ひょんなところからつながることがほとんどです」

インターステラテクノロジズの稲川貴大社長(リリースより)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.