堀江貴文に聞く インターステラテクノロジズと民間宇宙ビジネスの現在地ホリエモンが仕掛ける「宇宙ビジネス」【前編】(1/5 ページ)

» 2021年04月02日 08時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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 民間による宇宙ビジネスが世界で活発化している。米SpaceX(スペースX)は2020年5月、民間初の有人飛行ロケットの打ち上げに成功。同年11月からは、国際宇宙ステーションへの定期的な有人飛行が始まった。民間による小型衛星も次々と打ち上げられている。

 日本でいち早く民間による宇宙ビジネスに取り組んできたのが、実業家のホリエモンこと堀江貴文氏だ。堀江氏が創業したインターステラテクノロジズ(以下、IST)は現在、北海道大樹町を拠点にロケットを開発。19年5月には観測ロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機」(以下、MOMO3号機)」で、国内の民間ロケットで初めて宇宙空間に到達した。液体燃料を使った民間ロケットとしては世界で4番目の快挙だった。

 その後の打ち上げは宇宙空間への未到達や、機体トラブルによる打ち上げ延期などが続いていて、同社は打ち上げの信頼を高めるためにMOMOの全面改良に着手。今夏には改良した「MOMO」の打ち上げを予定している。また、打ち上げコストが1機で約6億円と、従来のロケットに比べて大幅に安価な超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発も進めている。「ZERO」の開発はISTにとって、ビジネスの成功を左右する社運を賭けたプロジェクトだ。

 ITmedia ビジネスオンラインは堀江氏に単独インタビューを実施。「世界一低価格で、便利なロケット」の実現を目指すISTの現状や、ゼロからのロケット開発を可能にした背景を聞いた。前編では堀江氏が「MOMO」と「ZERO」開発の現状を語る。

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)1972年福岡県八女市生まれ。実業家。SNS media&consultingファウンダーおよびロケット開発事業を手掛けるインターステラテクノロジズのファウンダー。現在は宇宙関連事業、作家活動のほか、人気アプリのプロデュースなどの活動を幅広く展開。2019年5月4日にはインターステラテクノロジズ社のロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機(MOMO3号機)」が民間では日本初となる宇宙空間到達に成功した。著書に『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』(SBクリエイティブ)、『非常識に生きる』(小学館集英社プロダクション)など(撮影:KAZAN YAMAMOTO)

21年は「MOMO」の“定常的な打ち上げ”へ 課題は?

 ISTが「MOMO3号機」で快挙を達成したのは19年5月。高度100キロ以上の宇宙空間への打ち上げに成功し、113キロまで到達した。民間資金で開発したロケットの宇宙到達は国内では初めてで、世界的にも政府系組織以外の企業では9社目だった。さらに液体燃料を使用したロケットの宇宙到達としては日本初で、世界でも4社目。日本の民間宇宙産業の未来を切り開く出来事だった。

 しかし、2度目の宇宙空間到達は現在まで果たせていない。19年7月に打ち上げた「ペイターズドリーム MOMO4号機」は、コンピュータが異常を検知して高度13.3キロで緊急停止。20年6月の「えんとつ町のプペル MOMO5号機」も、エンジンノズルの破損で最高高度は11.5キロにとどまった。同年7月の打ち上げは、メインエンジンで点火器の温度上昇が確認できなかったため延期となっている。

 このためISTは20年12月、これまでの打ち上げで起きた不具合を検証し、得られた経験をもとに「MOMO」を全面改良すると発表。21年夏には改良した「MOMO」を打ち上げる予定だ。堀江氏は改良の現状を次のように説明する。

 「起きているトラブルは毎回違いますし、バグはつぶせているのでいいのではないでしょうか。5号機で起きたエンジンノズルの破損は、対策したバージョンを今テストしています。いろいろな失敗は次につながりますよね。ZEROの初号機で失敗すると結構ダメージが大きいので、ZEROに向けた技術実証の役割を持つMOMOを改良して、同じトラブルはないようにしようとしています。今年(の目標)はまず、MOMOを定常的に打ち上げられるようにすることですね」

打ち上げ後に姿勢を崩した小型ロケット「えんとつ町のプペル MOMO5号機」(堀江貴文氏のYouTubeチャンネルより)
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