堀江貴文に聞く インターステラテクノロジズと民間宇宙ビジネスの現在地ホリエモンが仕掛ける「宇宙ビジネス」【前編】(2/5 ページ)

» 2021年04月02日 08時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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ターボポンプを室蘭工業大学と共同開発

 堀江氏が「失敗できない」と語る「ZERO」は、23年頃の打ち上げを目指す超小型衛星打ち上げロケット。全長約20メートルの2段式のロケットだ。高度500キロの地球低軌道に、重さ100キロの超小型人工衛星を打ち上げる能力を持つ。打ち上げ時の重量が1.1トンの「MOMO」に比べると、全長は倍以上で、重量ははるかに重い。

 さらに、高度500キロの軌道に超小型人工衛星を投入するためには、弾道飛行の「MOMO」に比べて約25倍のエネルギーが必要になる。それだけの推力を持つエンジンを開発することで、目標に掲げる「ロケットをインフラにすること」が実現する。

 「ZERO」のエンジン開発は、現状では課題も多い。一つは人材の不足だ。現在ISTには約50人の社員がいるが、「ZEROの開発のためにはスタッフは全然足りていない」(堀江氏)という。

 「人が足りていないので、さまざま方法を駆使しています。特に足りていないのは、ロケットエンジンの重要な部品になるターボポンプを開発するスタッフです。ターボポンプは推進剤を燃焼器に送り込む部品で、人間に例えると心臓の役割をします。開発に取り組んでいる社員は3人だけで、室蘭工業大学教授の内海政春先生と、研究室のメンバーに手伝ってもらっています」

超小型人工衛星打ち上げロケットの「ZERO」(リリースより)

 北海道室蘭市にある国立大学法人室蘭工業大学では、約200人の大学生と大学院生が航空宇宙工学を学んでいる。ISTは19年から、航空宇宙機システム研究センターの一部を借りて、ターボポンプの研究開発を進めてきた。センター長を務める内海教授は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)でターボポンプ式エンジンLE-7などの開発に関わった専門家だ。

 さらに20年12月には、室蘭工業大学の地方創生研究開発センター内に「インターステラテクノロジズ室蘭技術研究所」を開設。大学の力を借りて開発を加速する考えだ。

 堀江氏は、資金集めに奔走すると同時に、社員から話を聞くなどして、技術的な面での進捗状況を詳細に把握している。ターボポンプとZEROの開発スケジュールを、次のように説明する。

 「ターボポンプは液体燃料を吸い込む部分にあたるインデューサの設計が終わったところです。協力会社と一緒に実物も作っています。これからターボポンプ全体の設計を行い、シミュレーションをしていきます。

 具体的には、タービンの羽根の形状などを考えて部品を削ることや、軸受けの発熱を抑える方法、それに、回転数をゼロから数万回転まで上げていく中で振動に耐えられるような形状を、共同研究によって21年度中に一通りシミュレーションしていきます。

 その後に実際に火入れをして、22年度に燃焼試験を実施します。内海先生や大学院生の方に手伝ってもらって、予定通りに進んではいますが、社員が3人だけでは全然足りません。スタッフが足りないことが今の課題ですね」

インターステラテクノロジズは室蘭工業大学内に研究開発拠点「インターステラテクノロジズ室蘭技術研究所」を開設している(リリースより)

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