なぜデジタル画像に何十億円もの値がつくのか? 熱狂するNFT市場(4/5 ページ)

» 2021年04月07日 07時00分 公開
[天羽健介ITmedia]

NFTの今後を左右する規制動向

 ここからは少し規制やルールについて説明していきます。NFTは、現在、日本において暗号資産ではない「モノ」に近い整理がなされているという話をしました。これは、金融庁が19年9月に公開した「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 16 仮想通貨交換業者関係) 」に寄せられたパブリックコメントへの回答で明らかにされたものであり、法律で定義されたものではありません。

 現在、国内においてNFTの法的な定義や取り扱いや販売のルールが明確に定められていないことが、将来的に事業者の参入やユーザーの利用の妨げにつながる可能性があります。

 そこで、国内の主要暗号資産取引所、国内トップクラスの法律事務所、監査法人など約100社が加入する一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(以下、JCBA)では、昨年NFT部会を立ち上げ、NFTの健全な普及に向けてガイドラインの策定を進めています。

 現在では法整備が整っている暗号資産も、新たなテクノロジーのもとに生まれ急激に広がっていったため、数年前までルール整備が十分とはいえない状況でした。NFTはまさに生まれたばかりの状況であり、暗号資産の黎明期同様、ルールを作っていくフェーズにあります。

 NFTの利用用途は、ゲームやスポーツ、アートなど暗号資産に比べても多岐に渡るため、各業界の企業様や業界団体と建設的な意見交換が必要です。JCBAでは、既存のルールと整合性を取る形で、実際に活用され、NFT業界への新たな事業者の参入を促進したり、利用者が安心してNFTを使うことができるガイドラインの策定を目指しています。

NFTがマネーロンダリングに使われる?

 さらに21年3月19日には、資金洗浄対策を調査する国際組織である、マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(以下、FATF)が、暗号資産に関するガイダンスを新たに発表しました。このガイダンスでは、FATFがこれまで規制対象に入っていなかったNFTに注目していることが明らかになりました。

 ここ最近、高額なNFTの売買事例が出てきていることもあり、例えば悪意ある身元不明のAさんとBさんが、本来1000円のNFTに30億円の値段をつけてマネーロンダリング(資金洗浄)をすることが実質的に可能な状態となっていることが危惧されています。これは一方で、NFTの普及が進みつつあることの裏返しともいえます。

 このように、NFTがマネーロンダリングの手段として利用されるのを防止するため、暗号資産取引所と同様、NFT取引においても今後厳しいルールを科される可能性があります。

 また、今回公開されたFATFガイダンスでは、VA(=バーチャルアセット≒暗号資産)、及びVASP(=バーチャルアセットサービスプロバイダー≒暗号資産取引所のような、暗号資産の交換・移転・保管・発行・引受を行う事業者)の定義の拡大解釈が行われている点も、NFT関連事業を展開している業者から注目が集まっています。

 VASPが拡大解釈されるとはどういうことでしょうか。NFTがVA(=バーチャルアセット≒暗号資産)と認定される可能性が示唆されているということです。

 また、VASPに関しては新たにスマートコントラクトやDappsの開発・運営に関与する事業者が規制対象となる可能性があります。NFTがVA(=バーチャルアセット≒暗号資産)と認定された場合、暗号資産交換業者と同等の厳格な取扱審査や管理の態勢が求められたり、現状よりも厳格な取扱審査や管理の態勢が求められたり、登録ユーザーの本人確認を義務付けられるようになる可能性があります。

 さらに、秘密鍵を自分で管理するウォレットを接続して利用するタイプのブロックチェーンゲームなどは、接続元の未本人確認ウォレットそのものが規制される可能性があります。そのため、コンテンツ事業者が発行するNFT及び提供サービスそのものにダイレクトに影響が出る可能性があります。

 より良いサービスを安心してユーザーに利用してもらうため、また、事業者のNFT事業の参入を促進するために、先行してNFTの取り扱いに関する自主的なルール作成・運用をしながら大切に市場を育成していくことが、今後のNFTの業界の発展には最重要であると考えています。

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