労働保険・社会保険関係の電子申請は、数年前に比べて格段に扱いやすくなっており、中小企業でも積極的に利用したいところです。ここでは、電子申請の仕組みと留意点を解説します。
労働保険・社会保険に関する各種手続きの電子申請は、最近、各種の改善が行われ、利用者側にとって使いやすい仕組みに変わってきました。
大企業(資本金等が1億円を超える法人等)は、2020年4月以降に開始される事業年度から、特定の手続きについては、電子申請により行うことが義務付けられ、すでに多くの企業が電子申請を利用しています(図表1)。
一方、「従来通り紙のままでよい」と考える中小企業も多いようですが、電子申請は、数年前に比べて格段に使い勝手がよくなり、コストをかけずに始めることもできます。電子申請は、業務効率化の面でぜひとも取り組んでいくべきテーマになっています。
新型コロナの影響によりテレワークが推進されていますが、電子申請はこれらの新しい働き方にも適していると考えられます。
労働保険・社会保険の電子申請には、現在3つの方法が存在しています。それぞれメリット・デメリットがありますので、自社に合った方法を選択してください。
政府が運営するe-Gov(イーガブ)というWeb上のポータルサイトを利用します。ほとんどの労働保険・社会保険に関する手続きに対応しています。
特別なソフトも不要で(e-Gov無償提供のソフトはインストール必要)、パソコンの画面から入力することで、手続きの送信まで完結できます。原則として電子証明書が必要となりますが、2020年11月のリニューアルにより、無償で作成できるGビズIDがあれば電子証明書の省略が可能となる手続きも多くあります。
日本年金機構が無償で提供している「届書作成プログラム」を利用することで、電子申請が可能です。この方法ではGビズIDを認証に利用します。電子証明書は必要ありません。
現時点では利用できる手続きの種類は多くありませんが、よく発生する手続きにはおおむね対応しており、複数名の手続きも一度に申請することが可能です。
このマイナポータルを利用した申請方法は、政府が目指している社保・税のオンラインワンストップ化に向けた取組みです。後述する健康保険組合向けの電子申請もこの仕組みを利用しています。今後、マイナポータルに対応する手続きは増えていく予定です。
e-GovはWebサイトからの申請のほかに、API(Appli-cation Programming Interface)を用意しています。これは、外部のソフトから申請データ等を受け渡しする窓口のようなものです。これに対応した人事給与システムであれば、e-Govサイトを経由せず、人事給与システムの操作のみで、直接申請することが可能となります。
管理している人事給与データを利用できるため、電子申請のために入力し直す手間は最小限になります。利用している人事給与システムがAPI申請機能に対応していれば、これを利用するのがよいでしょう。対応する手続きの種類や操作性については、利用するソフトにより異なります。
(3)の対応ソフトがない場合は、まずは(1)のe-Govの利用を検討してみるのがよいでしょう。
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