マーケティング・シンカ論

ヒルズアプリ誕生で生まれ変わった森ビル「ヒルズ」 DX化でどう進化?顧客データを「ONE ID」でつなげる(1/3 ページ)

» 2021年04月26日 10時00分 公開
[西田めぐみITmedia]

 企業や行政が急務とする「DX化」の波は、街づくりにも例外なく押し寄せている。IoTやAIといったデジタル技術を、交通・防災・教育などに役立てようという「スマート東京」は今まさに進行中であり、都市DXの推進は加速中だ。

 そんな中、2021年4月5日、森ビル(東京都港区)が専用IDの発行とアプリを通し、数ある“ヒルズ”情報を顧客にスムーズに提供する「ヒルズネットワーク」という、新しい試みをスタートした。東京を代表するランドマークをいくつも手掛けてきた不動産デベロッパーが生み出した、デジタル×ヒルズの魅力とは何なのか。森ビルに直接、話を聞いた。

photo タウンマネジメント事業部 TMマーケティング・コミュニケーション部 ヒルズネットワーク推進グループの山本純也氏。16年4月森ビルに入社。財務部を経てタウンマネジメント事業部に配属され、六本木ヒルズなどのPR業務を経験。18年より「ヒルズネットワーク」の開発に携わり、コアメンバーのひとりとしてプロジェクトを主導した。取材はオンラインで実施

全社的な課題は「事業部の縦割り分担」だった

 ヒルズネットワークを理解する上で欠かせないのが、「ヒルズID」の存在だ。ヒルズの居住者、オフィスワーカー、来街者であれば誰でも作成できるヒルズIDは、サービス水準を高めるため、森ビルにとって非常に重要な役割を担っている。

 ヒルズID誕生のきっかけとなったのは、森ビル社内で長い間くすぶっていた、ある課題意識だったという。ヒルズネットワーク推進グループでプロジェクトを担当する山本純也氏は、「今までは、オフィスワーカー向けのサービスはオフィス事業部が、居住者向けのサービスは住宅事業部が、といったように役割分担が縦割りになっていました。しかし、例えばオフィスワーカーがランチで商業施設を使うこともあるし、居住者がオフィスワーカーになることもあるわけです。事業部を横断してお客さまを捉え、サービスを提供するためにどうすればいいのかは、全社的な課題でした」と話す。

 ヒルズでは、利用者に応じてさまざまなサービスを展開している。森ビルのオフィスワーカー向け情報サイト「WORKERS BOARD」、居住者限定サイト「MORI LIVING」などが該当するが、ログインIDは基本的にバラバラ。属性ごとに用意したベネフィット(優待)など、いちいち各サイトで調べなければ内容が分からないサービスもあり、「そこまでするのはハードルが高いのではないか」(山本氏)と懸念していたという。

photo 森ビルのオフィスで働く人に向けた情報サイト「WORKERS BOARD」。他にも、会員登録が必要なヒルズサービスは多数ある(「WORKERS BOARD」のWebサイトより)
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