加盟か、独立か? 波乱のスーパー業界、今後は「卸売業」こそがカギを握ると思えるワケ小売・流通アナリストの視点(3/4 ページ)

» 2021年04月28日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

 こうした状況を見据えて、大手食品卸では「情報卸」化を進める動きが加速している。少し前、日経MJが「日本アクセス、情報も卸す 中小取引先をデジタル化」(21年2月11日)という記事を載せていた。

 記事によると、取引先であるスーパーに対して初期投資0円でアプリ開発を請け負い、メーカー側の販促情報をスーパーへ、そしてスーパーのリアルタイム販売情報をメーカーへ仲介するというものだという。これが実現すれば、中堅以下のスーパーの情報武装の軸になることも可能になる。既に京阪神の阪急オアシスで5万5000人がアプリを利用、首都圏のいなげやや北海道のコープさっぽろでも導入実験が始まっているという。日本アクセスに限らず、大手食品卸の将来構想はおおむねこのような情報化が前提だと考えられる。

 同記事によれば、ゆくゆくはこのデータを活用して「物流の最適化やメーカーの生産計画にまで役立てられる可能性も秘めている」ということだが、まさにその通りだろう。生産、物流、販売までの関係者を一気通貫でデータが結ぶというサプライチェーンマネジメントが構築されるということであり、卸が提供する製造小売業システムとなることは間違いない。

 ただ、中小中堅スーパー側がこの仕組みに乗っかれば万事OKというわけではない。なぜなら、大手小売は店舗のデジタル化(商品、決済以外の顧客行動データのデジタル化)を着実に進めており、この点にもテコ入れをしないと、大手との競争には勝ち得ないからだ。あくまで、こうした仕組みを利用すれば中堅以下のスーパーの中では優位に立てる、という水準であることは付記しておきたい。

 また、卸を主語とすれば、こうした流れを強めることで情報を軸に中小スーパーの商流、物流を統合し、大手に伍していける製造小売業のサプライチェーンを構築するということにはなるが、スーパー側の立場からすれば「痛しかゆし」といった側面もある点に注意が必要だ。

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