加盟か、独立か? 波乱のスーパー業界、今後は「卸売業」こそがカギを握ると思えるワケ小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)

» 2021年04月28日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]
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 よく似た仕組みを既に構築しているのが、セブン‐イレブンを始めとした大手コンビニチェーンだろう。このビジネスモデルになぞらえれば、中小スーパーは複数店経営のコンビニ加盟店、食品卸はコンビニ本部ということになり、その関係は対等という前提ではあるが、事実上インフラのほとんどを食品卸に依存するようにも見える。

 ただ、幸いにして食品スーパーの売上の半分以上を生鮮品と総菜が占めており、収益のかなりの部分もこの部門が稼いでいる。デジタル化時代の差別化はこのジャンルでいかに消費者の満足度を高められるか、ということになってくるのだろう。これまでも生鮮・総菜の強さが競争力に影響することは経験的にも実証されているが、今後はその実力差が競争力にさらに直結するようになるといえる。

デジタル化時代だからこそ、生鮮や総菜といった基本商品の力が求められる(出所:ゲッティイメージズ)

 つまり、インフラに漫然と依存する小売は、極めて危険な状況に陥ることになる。情報卸がインフラを提供するのは、「自社の商流を拡大する役割を担うパートナー」だからであって、長期的にシェアを落としていくようなスーパーを応援する義理などない。

 実際これまでも、食品卸の逆選別を受けて商品調達が難しくなり、破綻に至ったという地方スーパーも実在する。そこまでいかなくても、インフラ参加企業の有力企業との統合へと誘導されることは十分にあり得るだろう。「そうは問屋が卸さない」という言葉は、昔からそうだったということの名残だ。これから中小スーパーが、自主独立を維持するというのは簡単なことではないのかもしれない。

 かつてコンビニが日本に本格的にデビューした1970年代、コンビニ本部が加盟店候補として勧誘したのは、当時、急成長していたスーパーに押されていた個人経営の食品小売店や酒販店だった。50年たった今、「情報卸」本部に勧誘されているのが、かつて個人書店を圧迫していたスーパーだというのも時代の変遷なのだろう。自主独立にこだわって破綻してしまう企業もあれば、コンビニ加盟店として複数店を展開しながら、50年間隆々としている企業もある。「加盟店」になって生き残るか、茨の道の自主独立かは、経営者の選択次第だが、その中間の選択肢はなさそうだ。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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