シリコン・サイクルはスーパー・サイクルに入った!?KAMIYAMA Reports(2/2 ページ)

» 2021年04月28日 14時37分 公開
[神山直樹日興アセットマネジメント]
日興アセットマネジメント
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 サイクルを分析する際、逆ウォッチ曲線、いわゆる「くるくるチャート」(図)をよく使う。17年末に半導体売上高のサイクルは、右上に大きくぶれていた。しかし、新しいトレンド線を使って描きなおすと、21年2月時点の変化(縦軸)は依然高いものの、トレンドからのかい離(横軸)がそれほど大きく見えない。

世界の半導体売上高のサイクル

 つまり、17年末に「行き過ぎ」に見えた(右上に大きく飛び出した)売上高は、結果として新しいサイクルであったわけで、「スーパー・サイクル」が現われていたのだ。現在もコロナ禍の影響などが一時的なサイクルの強さ(第一象限にあるということは、左下に回りやすい(反時計回りのサイクル))に影響を与えているが、非合理なバブルには見えない。

 このように、17年ごろに始まったとみられる半導体売上のスーパー・サイクルは、技術革新に伴って新商品やサービスが広がった結果、半導体の使用量が急増したことにより起きた、と判断している。

米中テクノロジー競争も後押し要因に

 投資家が心配しているのは、バイデン政権と中国とのテクノロジー競争激化に安全保障面への配慮などが加わり、輸出入制限などのさまざまな制約が発生し、米中のテクノロジー産業、ひいては半導体需要が低迷する可能性である。確かに、安全保障については、通信分野において中国製品を西側諸国が使わないこと、一部の高性能な半導体は米国から中国への輸出を制限するなど、さまざまな制約が実際に起こり始めている。

 米中関係については、貿易不均衡に着目して関税を引き上げたトランプ政権と人権問題などに着目するバイデン政権とで対応が異なる。

 トランプ政権で引き上げられた関税は、バイデン政権でも維持されると予想する。なぜなら、中国の貿易は不公正だ、といった考えが米国で幅広く受け入れられているからだ。しかし、バイデン政権の着目点からみると、関税を引き下げないまでも、引き上げる可能性は低いだろう。貿易不均衡よりも、人権問題を理由に中国政府高官への制裁を行う傾向にあるからだ。

 バイデン政権は中国が最大の競争相手であるとして、米国への留学などを制限する可能性もあるが、貿易そのものを制約する可能性は低いだろう。それゆえ、通信分野や高機能部品などについての軍事・安全保障面からの制約はこれまで同様に続くが、バイデン政権で大幅に引き上げられるとはみていない。軍事・安全保障面については、国防総省など党派色が小さい部門で検討されているからだ。

 中国は、米国から主要部品を入手する難しさが明らかになったことで、政府が補助金を投入して高性能な半導体設計と生産を始めている。この動きは、結果として中国の跨越(カエル跳び)成長の象徴の1つとなろう。米中対立は、人権問題など経済以外の分野でトランプ政権時代よりも厳しくなる恐れがあるが、中国の技術革新の始まりとなる可能性もある。安全保障分野での制約は、テクノロジー産業全体からみればさほど大きくないと、みている。

筆者:神山直樹(かみやまなおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト。長年、投資戦略やファイナンス理論に関わってきた経験をもとに、投資の参考となるテーマを取り上げます。

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