さて、そこで想像していただきたい。そのような「ぬるま湯」に頭までどっぷりと浸かっている人たちの間で、「韓国ドラマやハリウッドに負けない作品をつくれ」「世界に通用するコンテンツを」なんてスローガンが掲げられたとことで、果たしてどこまでそれが本気で実行されるだろうか。
されるわけがない。1億2000万人の視聴者を独占して、「電波ムラ」のなかで分配しているだけで十分にメシが食えるのに、リスキーな海外進出なんてめんどくさいことをわざわざやるメリットがないのだ。
「いい加減なことを言うな! テレビ局だって真剣に海外進出をしているぞ」と腹の立つ民放キー局関係者もいらっしゃるだろうが、これは何も筆者が思いつきで話していることではなく、テレビという産業のなかで過ごしてきた方たちもずいぶん昔から言っている。
例えば、フジテレビのプロデューサーとして多くの人気番組を手がけ、ニッポン放送で会長などを経て、現在は東映アニメーションの社外取締役を務める重村一氏は、今から11年前のシンポジウムで、日本のドラマの海外進出が進んでいない問題の「本質」をこのように指摘している。
「欧米をはじめとして、アジアの諸国も含め、放送局と制作プロダクションは分離されているケースが主流である放送制作体制にあって、日本は50数年の歴史で、テレビ局が制作と放送を一元化して行う体制が、その間紆余曲折はあったものの維持されてきた。(中略)もし、制作プロダクションが著作権や番組販売に関する権利を自分の意に沿う形で所有していれば、海外への番組販売や、海外との共同制作などは、現状以上に促進されていたのかもしれない」(第19回JAMCOオンライン国際シンポジウム)
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