ただし、半導体不足などの影響もあり、21年度の見通しは必ずしも明るくない。「NISSAN NEXT」では営業利益率2%を掲げていたが、今回明かした21年度見通しでは、販売台数が損益分岐点である440万台、営業利益はゼロとした。
「21年度は、現時点においては利益率2%は難しく(中国合弁会社比例連結ベースでも)1%レベル。1Q決算時には新たな見通しを出したい。23年度は当初計画通り営業利益率5%を目指す」(内田氏)
コスト削減や販売パフォーマンスの向上で5500億円の改善を見込むが、新車への投資1500億円やビジネスリスクなどを加味し、営業利益見通しはゼロとした
販売台数は20年度の405万台から8.6%アップさせる計画だ。特に、北米で17%増の142万台の見通しとしている。
販売台数は全体で8.6%伸ばし、損益分岐点にあたる440万台を目指すとした
厳しい中でも、研究開発費は5400億円、設備投資は4400億円と、それぞれ20年度比で7.2%増、8.5%増の計画とした。
強く押し進めるのはEVとe-Powerの電動化だ。21年度は、SUVのEVであるアリアのほか、軽自動車のEVを「他社に先駆けて国内市場に投入する」(内田氏)。e-Powerでも、シルフィ、キャッシュカイ、エクストレイルといった新型車を投入する予定だ。
EVとe-Powerを軸とした電動化を武器とする
「今ようやく他社が多くのEVを市場に投入してきたが、10年に及ぶ豊富な経験と知識、さらにライフサイクル全体で包括的な取り組みを行っている会社は、日産以外、世界中どこにもない」
内田氏はこう話し、EVを軸に日産の立て直しを進めていくことに自信を見せた。
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