日産自動車は5月11日、2020年度の決算を発表した。売上高は前年から2兆円減少し7兆8600億円、営業利益は1100億円減少し1507億円の赤字だった。コロナ過で大きな落ち込みを見せた第1四半期(4-6月)以降、営業利益は回復したが損益ゼロあたりで推移し、第1四半期の損失を取り返すには至らなかった。
20年度決算発表に臨んだ日産の内田誠社長
決算発表で内田誠社長が強調したのは、19年度決算で発表した事業構造改革である「NISSAN NEXT」が順調に進んでいる点だ。2つの工場閉鎖や、車種を69から55まで削減するなどの取り組みで、固定費を3500億円以上削減した。これによって、営業利益ベースの損益分岐点を、18年度の500万台から440万台に下げることができたとしている。
台数を追わない計画としたことで、20%を超える在庫圧縮や、販売奨励金やレンタカー比率も下げることができた。売上高に対する販売奨励金の比率は前年から1.6ポイント減、レンタカー比率は5ポイント減となった。
固定費を下げ販売台数を抑えるとともに、将来への投資も継続した。「18カ月で12の新型車」という発表に対して、現時点で5車を販売、6車を発表している。また「30年度早期より、主要市場に投入する新型車をすべて電動車両へ」(内田氏)という目標を掲げ、EVと「e-Power」と同社が呼ぶエンジンで発電しモーターで駆動するシリーズハイブリッド車に注力するとした。
将来への投資として日産が掲げた新型車と新技術
ホンダは内燃機関の開発を止め、EVへの集中を発表したが、「ガソリン車が全くなるなるのかどうかはお客さまが決めること。環境とお客さまのニーズのバランスだ」(内田氏)と、現時点の考えを話した。
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