フェアレディZの復活で、自動車クラスターは大盛り上がり、それは喜ばしいことである。写真を見て、筆者もとても好意的に捉えたし、タイミングさえ間違えなければこれは売れるだろう。日産関連としては久方ぶりの朗報なのだが、ホッとしてはいられない。肝心の母体が危ない。
新フェアレディZは日産復活の象徴となるか
7月15日、「22日から日産が3種の期限を持つ社債を発行する」との日本経済新聞の報道を見たが、筆者はその金利を見て驚いた。1.5年債(290億円)が1.00%、3年債(300億円)が1.40%、5年債(110億円)が1.90%だ。
2016年4月15日発行の800億円の5年債は0.15%だったし、16年4月15日の200億円の10年債でも0.33%だったことと比べれば、投資筋からの日産の信用がどれだけ下落したか分かるだろう。この社債は無担保だという差はあれど個人の住宅ローン金利より高い。
これは大変だなと思っていたら、9月10日と12日にブルームバーグに続報が出た。今度は総額80億ドルに及ぶ4本のドル建債と20億ユーロのユーロ建債を発行したのだが、日産が払うその金利は目の玉が飛び出るようなものだった。ドル建債の3年ものの金利が3.043%、5年ものの金利が3.522%、7年ものが4.345%、10年だと4.810%である。日本円よりもドルは金利が高いとはいえ、すごい金利である。
慌てて、日産のIRページに記載されている長期債権格付け情報をチェックしたところ、スタンダード・アンド・プアーズは「BBB−」、ムーディーズジャパンは「Baa3」、格付投資情報センターは「A」。各社でグレードを示す書き方は違うが、おおむね「投資したければしてもいいけど、リスクに見合う金利が取れるならね」という意味。どの格付け会社も、あと1ランク落ちたら、「投資不適格」という瀬戸際の格付けだ。これはもう、万が一債券が紙クズになったおりには「あの金利を見て買った人の自己責任」といわれてもおかしくない。
- 完敗としか言いようがない日産の決算
ズタズタの決算内容だった日産。一つの要因は、北米で販売促進費用(インセンティブ)をつぎ込んで売り上げを伸ばそうとしたことにあるのではないか。対策として、22年にはモデルラインアップの半数を電動化車両にするというがバッテリー供給は大丈夫か。20車種の新型を出すというのも、短期間で作られる新車は大丈夫なのか?
- 強いトヨタと厳しい日産
日本の自動車メーカーは調子が良いのか悪いのか、とくにここ数年中国の景気悪化が伝えられており、その影響が心配される。全体を見て、とにかくこの逆境下で強さに圧倒されるのがトヨタで、ちょっと言葉を失う厳しさに直面しているのが日産だ。スズキとマツダは日産を見るとまだ救われるが、下を見て安心していていい状況とは思えない。概要としては各社そろって、程度の差はあれど逆境である。
- 「20モデル以上の新型車」はどこへ? どうなる日産自動車
財務指標はほぼ全滅という地獄の様相となった日産の決算。問題に対してすでに適切な手を打ってあり、今決算には間に合わなかったものの、回復を待っているというのならともかく、ただひたすらに悪い。そうした全ての状況に対して、ようやく大筋の方針が出来、これから個別の具体策策定に着手するという状況で、未来が全く見えない。念のためだが、決して未来がないといっているのではない。日産の未来は現状、皆目見当がつかないということだ。
- ゴーン国外逃亡で考える、日産前社長の西川氏が逮捕されない理由と検察の劣化(前編)
ゴーン氏の会見後も毎日のように新しい動きが報じられたが、そもそもの発端を理解している人は少ないだろう。世間では「給料をごまかして逮捕された挙句に国外逃亡したとんでもないヤツ」と認識されていると思うが、実際はそのような単純な話ではない。なぜゴーン氏が国外逃亡を選んだのか、なぜ西川氏と検察もまた問題があると断言できるのか、複雑に絡んだ事件を整理してみたい。
- トヨタの決意とその結果
残念ながらリーマンショックまでの10年間、トヨタは調子に乗っていた。毎年50万台水準で増産を続け、クルマの性能を無視してまで工数を削っていった。しかし結果、リーマンショックの時は15%の生産ダウンで、4600億円の赤字を計上した。そこからカイゼンを積み重ねたトヨタは、コロナ禍にあっても四半期で黒字を保てるほどの強靭(きょうじん)化を果たした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.