ゴーン国外逃亡で考える、日産前社長の西川氏が逮捕されない理由と検察の劣化(前編)専門家のイロメガネ(1/6 ページ)

» 2020年01月30日 11時40分 公開
[中嶋よしふみITmedia]

 日産の元会長、カルロス・ゴーン氏が国外に逃亡……令和になって初めて迎える大晦日に、衝撃のニュースが流れた。

 コントラバスのケースに隠れていた、民間警備会社を利用した、元グリーンベレーの人物が協力した、動画サイトの大手・ネットフリックスと契約を交わした等々、未確認の情報も多数飛び交った。

 年明け後、ゴーン氏はレバノンで会見を行い世界中のメディアから注目を集めた。サプライズといえる新しい情報は無かったものの、やっと自由に発言ができるという高揚感からか、会見は独演会の様相を呈した。

レバノンで会見を行ったゴーン氏(写真 ロイター)

 15億円の保釈金を放棄し、一説には20億円も掛けたという国外逃亡でもはや安泰と思われたゴーン氏だが、脱出時にトルコの航空会社を違法に利用したと刑事告訴され、「イスラエル入国の罪」で起訴すべきとレバノンの弁護士が検察に報告をしたとも報じられている。そしてレバノンは、富裕層、既得権益層への不満が爆発しことが原因で反政府デモの真っただ中にあり、ゴーン氏にとっては故郷でさえ安息の地とはいえないようだ。

 日本国内でも動きがあった。会長のゴーン氏に加え日産も法人として起訴されたのに、社長だけ不起訴はあり得ないと、検察審査会は処分不服の申し立てを受けて審査をしていたが、西川廣人前社長の不起訴が覆ることはなかった。

 ゴーン氏の会見後も毎日のように新しい動きが報じられたが、そもそもの発端を理解している人は少ないだろう。世間では「給料をごまかして逮捕された挙句に国外逃亡したとんでもないヤツ」と認識されていると思うが、実際はそのような単純な話ではない。

 この事件を理解するには、ゴーン氏、前社長の西川氏、そして検察と三者が極めて問題のある行動を起こしていること、そしてもし西川前社長が逮捕されていれば少なくともゴーン氏の逃亡はなかったことを知る必要がある。

 なぜゴーン氏が国外逃亡を選んだのか、なぜ西川氏と検察もまた問題があると断言できるのか、複雑に絡んだ事件を整理してみたい。

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