ゴーン氏が逮捕されて国外へと逃亡するまでの一連の事件、一連の騒動には3人の主人公がいる。ゴーン氏、ゴーン氏の右腕で日産の副社長・社長を務めた西川氏、そして検察だ。
誰が悪いか、どちらが悪いか、といった観点で語られてばかりいるが、程度の差はあれど三者ともいずれも「アウト」だ。
ゴーン氏は逃亡発覚後、米国で代理人を通じて声明を出した。有罪が前提とされている日本では公平な裁判が受けられない、だから逃げたと。当然のことながら裁判から逃げておきながら日本の司法を批判する資格はないと、非難の渦が巻き起こった。
2018年11月、当時会長を務めていたゴーン氏が緊急逮捕された直後のメディアは「ゴーン酷い」の大合唱だった。その後はゴーン体制で副社長、社長と重責を担っていたことから、ゴーン氏の息の根を止めた西川氏の責任を問う声も高まり、「西川酷い」と大きな揺り戻しが起きた。
ゴーン氏の逮捕後は、日産の業績が急激に悪化したことに加え、西川氏が株価に連動する報酬(SAR)を4700万円も多く受け取った事が発覚したことで西川批判の声は更に強まり、引責辞任へつながる。
現在は国外逃亡で再度ゴーン氏が非難されている。行ったり来たりでメディアも世論も忙しいが、西川氏とゴーン氏の関係は一方がシロならば一方がクロという単純な話ではない。
検察もやり玉にあげられている。ゴーン氏逃亡を受けて森法務大臣は会見で、日本の司法制度と不正出国は別問題であり、ゴーン氏の逃亡を正当化する理由にならないと強く指摘した。このコメントには筆者も100%同意する。つまりゴーン氏も検察も両方アウトということだ。
日本人の目には、自分の罪を棚に上げて「なぜ私だけ悪いのか? なぜ私だけ逮捕・起訴されるのか?」と会見で繰り返し他者を非難するゴーン氏の姿は、往生際が悪く人間性を根底から疑わせる存在に映る。しかし、今回のゴーン騒動で最も重要な点は、まさにこの「なぜゴーン氏だけが?」という点にある。
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