ゴーン国外逃亡で考える、日産前社長の西川氏が逮捕されない理由と検察の劣化(前編)専門家のイロメガネ(5/6 ページ)

» 2020年01月30日 11時40分 公開
[中嶋よしふみITmedia]

ゴーン氏が逮捕された謎だらけの容疑

 ゴーン氏が逮捕された容疑の争点は以下4点だ。

  1. 報酬の虚偽記載(5年分+3年分)
  2. 個人的な資産運用のリスクを日産に押し付けた 
  3. 個人的な資産運用のリスクに対して、信用保証をしてもらったお礼に会社のお金で代金を払った(いわゆるサウジルート)
  4. オマーンの販売代理店に支払った報酬がゴーン氏に還流している(いわゆるオマーンルート)

 報酬額でウソをつき、投資のリスクを日産に押し付けて、個人的な資産運用に協力をした友人に会社のお金でお礼を支払い、販売代理店に独断で報酬を支払った挙句自身にお金を還流させた。ウソ、公私混同、横領と起訴内容が正しければこのような説明になる。メチャクチャの一言だが、実際はどうか。

 1つ目の争点である報酬の虚偽記載は、8年間の容疑のうち、最後の2年間は西川氏が代表取締役社長兼CEOを務めていた。つまり虚偽記載が事実であったとしたら、ウソの書かれた有価証券報告書の「提出の責任者」は西川氏だ。

19年7月に決算会見にのぞんだ西川社長(当時)(写真 ロイター)

 これは逮捕から10日後に書いた前回の記事で「西川氏がゴーン氏を犯罪者だと批判して、それが正しいのなら西川氏も罪を犯していることになる」と説明した通りだ。

 この点について「西川氏は司法取引をしているから逮捕されない」と誤解している人は非常に多い。しかし司法取引をしたのは、社長室の幹部と外国人専務であると複数のメディアで報じられている。少なくとも西川氏でないことは間違いない。

 なぜ虚偽記載の当事者である西川氏は逮捕・起訴されないのか? 明らかに異常な検察の判断を、弁護士の郷原信郎氏は、日産と西川氏と検察の間で交わされた「ヤミ司法取引」であると極めて厳しく批判している。

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