5月28日、日産自動車の決算及び事業構造改革説明会がオンラインで開催された。すでに前回決算(19年度日産決算解説記事参照)から大波乱に見舞われていた日産の状況は果たしてどうなのか?
EVクロスオーバーのコンセプトカーとして東京モーターショーで発表した「アリアコンセプト」
まずは概要から見ていく。販売台数は551万6千台から493万台へと58万6千台(マイナス10.6%)へダウンした。売上高は11兆5742億円から9兆8789億円へと1兆6953億円(マイナス14.6%)のダウン、営業利益は3182億円から3587億円ダウンして、405億円の赤字へ転落となった。経常利益は辛うじてプラスだが、こちらも5025億円のダウン(マイナス91.9%)であり、当期純利益はマイナス6712億円。減収減益で販売台数もダウン。財務指標はほぼ全滅という地獄の様相となった。
販売台数は10.6%ダウンに留めたものの、売上高は14.6%ダウン(日産決算発表資料より)
正直なところ、何かコメントをといわれても分析すべきポイントがない。例えば、問題に対してすでに適切な手を打ってあり、今決算には間に合わなかったものの、回復を待っているというのならともかく、ただひたすらに悪い。そうした全ての状況に対して、ようやく大筋の方針ができ、これから個別の具体策策定に着手するという段階で、未来が全く見えない。念のためだが、決して未来がないといっているのではない。日産の未来は現状、皆目見当がつかないということだ。
- 完敗としか言いようがない日産の決算
ズタズタの決算内容だった日産。一つの要因は、北米で販売促進費用(インセンティブ)をつぎ込んで売り上げを伸ばそうとしたことにあるのではないか。対策として、22年にはモデルラインアップの半数を電動化車両にするというがバッテリー供給は大丈夫か。20車種の新型を出すというのも、短期間で作られる新車は大丈夫なのか?
- 象が踏んでも壊れないトヨタの決算
リーマンショックを上回り、人類史上最大の大恐慌になるのではと危惧されるこの大嵐の中で、自動車メーカー各社が果たしてどう戦ったのかが注目される――と思うだろうが、実はそうでもない。そして未曾有の危機の中で、トヨタの姿は極めて強靭に見える。豊田社長は「トヨタは大丈夫という気持ちが社内にあること」がトヨタの最大の課題だというが、トヨタはこの危機の最中で、まだ未来とビジョンを語り続けている。
- 強いトヨタと厳しい日産
日本の自動車メーカーは調子が良いのか悪いのか、とくにここ数年中国の景気悪化が伝えられており、その影響が心配される。全体を見て、とにかくこの逆境下で強さに圧倒されるのがトヨタで、ちょっと言葉を失う厳しさに直面しているのが日産だ。スズキとマツダは日産を見るとまだ救われるが、下を見て安心していていい状況とは思えない。概要としては各社そろって、程度の差はあれど逆境である。
- 6700億円赤字の日産自動車 待ったなしの「選択と集中」、その中身とは?
日産自動車が発表した2020年3月期決算では、純損益が6712億円の赤字に転落。“拡大路線”からの転換ができていない中で新型コロナによる危機が襲った。構造改革を進める4カ年計画では、生産能力や商品数の削減などによる「選択と集中」を加速させる。
- なぜ日産は「技術」をアピールして、「ぶっ壊せ」と言えないのか
日産の業績が悪化している。「ゴーン前会長のことがあったから仕方がないでしょ」と思われている人が多いかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違うところが気になるという。それは、同社のCM「ぶっちぎれ、技術の日産」というコピーだ。
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