クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

「20モデル以上の新型車」はどこへ? どうなる日産自動車池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

» 2020年06月22日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

商品の旧態化が著しく進行

 一応、営業利益の増減要因を見てみる。例によって左端の紺の柱が前年度の営業利益、右端の短い柱が今年度の営業利益となる。マイナス1610億円と書かれた赤い柱が、必要コストだ。為替の差損や新たな法規制への対応、原材料や関税と言ったあまり削減できない出費である。まあこれは仕方がない。

営業利益増減分析(日産決算発表資料より)

 続いて販売台数・構成で2923億円のマイナスだ。普通はここで「台数はダウンしているが構成は良くなっているのではないか?」とか、「構成が落ちても、台数が増えているのではないか?」というような話になるのだが、前年度の決算発表で明らかになっているように、日産は商品の旧態化が著しく進行しており、以来期内にめぼしい新型は発売されていない。つまり昨年から、さらに1年分の旧態化が進んでいる状況だ。これでは当然構成が良くなる要素はなく、冒頭で台数の10.6%ダウンもはっきりしているので、どっちもダメになっていると見るしかないだろう。

 という状況の下で、できることは値引きくらいしかない。旧態化した商品で、競合他社の最新型と戦うには、普通はインセンティブ投入の勝負になるはずで、大幅なマイナスにならないとおかしい。しかしながら不思議なことに、販促費用で632億円のプラス効果が出ているのをみると、防戦して台数を確保することについて、現場ではもう半ば諦め気分だったように思える。

 不利な商品を何が何でも売ろうと思えば販促費はもっと膨らむはず。しかしながら値引きはより一層のブランドイメージダウンに直結するので、捲土重来(けんどちょうらい)に備え、おそらくはガイドラインを設けて、値引きを抑制したのだろう。その範囲で売れるだけでいいという指令が出ていたのではないか? 当期一年の販売と引き換えにしてでも、これ以上のブランド毀損を防がないと復活のシナリオさえ書けなくなる。おそらくそういう判断だったはずだ。

 ちなみに「おそらくそういう判断だったはずだ」と、断言を避けているのは前期の決算資料と当期の決算資料の項目の括り方が違うからだ。何らかの事情があるのかもしれないが、こういう厳しい状況下で決算資料が比較しにくいと、あまり正直でない印象を受けてしまう。ちなみに昨期ではこれが「パフォーマンス」というよく分からない項目で括られており、その内訳としての販売活動ではマイナス1001億円となっていた。

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