クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

なぜ日産は「技術」をアピールして、「ぶっ壊せ」と言えないのかスピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2019年05月21日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

 日産の業績が悪化している(参照記事)。

 2019年3月期の連結純利益は前期比57%減の3191億円、20年3月期も1700億円と10年ぶりの低水準に沈む見通しだというのだ。

 この厳しい結果について西川廣人社長は、「昨年いきなり事件が起き、ルノーとの関係を含めて事業に集中できなかった」「(問題の)多くは元の体制から受け継いだ負の遺産だ」と釈明し、低迷もゴーン前会長のせいだと言わんばかりである。

 歴史は「勝者」がつくるものなので、西川氏が何をどう語ろうがそれはいいとしても、個人的には今回の惨状を招いたのは、「ゴーン体制」だけではないと考えている。日産を長く取材してきたジャーナリストの井上久男氏が指摘するように、日産は20年周期で権力闘争を繰り返してきた組織である。

日産の業績が悪化している(写真提供:ゲッティイメージズ)

 独裁者があらわれてクーデター、そこで権力を握った者もしばらくすると、側近から寝首をかかれるなんて感じで、足の引っ張り合いをする組織に構造改革などできるわけがない。つまり、今回の業績低迷の要因は、ゴーン体制以前から続く、日産の伝統ともいうべき「内向きな組織風土」にあるのだ。

 だからこそルノーと手を切って、新しい日産へと生まれ変わるのだと西川氏の肩を持つ方も多いが、残念ながらこの組織風土はゴーン追放後も1ミリたりとも変化していない。シビアな決算の3日後からオンエアされているCMがそれを雄弁に語っている。

 この秋からスカイラインに搭載される、世界初の運転支援システム「プロパイロット2.0」を扱ったこのCMでは、ブランドアンバサダーの矢沢永吉さんが手放し運転をしているのだが、問題はCMの最後に矢沢さんに言わせている、あの「キャッチコピー」だ。

 「ぶっちぎれ、技術の日産」

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