日産の業績は確かに悪いけれど、電気自動車や優れた自動運転技術があるのは事実なんだから別にそれくらい言わせてやれよと思うかもしれない。だが、実はこのコピー、そういう先端技術は関係ないのだ。
ドラマ『西部警察』で大門さんが操るフェアレディZやスカイラインに胸を躍らせていた世代なら、1980年代の日産がCMでこのようにうたっていたことがうっすらと記憶に残っているはずだ。
「先進技術の日産グループ」
つまり、日産というのは「やっちゃえ」「ぶっちぎれ」と今っぽいイケイケ感を打ち出しているものの、実は30年以上前からアピールすることをほとんど変えていない、というコテコテの「昭和の企業」なのだ。
日産の西川廣人社長(写真:ロイター)
「技術の日産」というスローガンがいかに前近代的かということは、GAFAを見ればよく分かる。これらの企業のCMや広告で、「技術のApple」とか「Amazonの技術は世界一」なんてキャッチコピーを目にしたことがないように、現代のテクノロジー企業は「技術自慢」などしない。世の中に訴えるべきは、テクノロジーの優位性ではなく、テクノロジーを用いて、この世界をどう変革していくのか、だと考えいているからだ。
そのような先端テクノロジー企業と対照的に、いまだ「技術自慢」を継続する「昭和の企業」が業績低迷と聞いても、申し訳ないが妙に説得力があるのだ。というと、「変わらぬ技術力があるということだろ! それをうたって何が悪い!」と怒りのあまり発狂する日産ファンも多いだろうが、「技術」が悪いと言っているわけではない。「技術自慢」を長く続けることが、「悪い」と申し上げているのだ。
なぜかというと、「技術の」という枕詞がつくような企業や、「ウチの技術は世界一」と何十年ものけぞっている組織ほど、ガバナンスが崩壊して破滅の道へ突き進みがち、という「不都合な真実」があるからだ。
その代表的なケースが、東芝である。
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