そこでどうするのかというと、「帳尻合わせ」である。「技術」を守るためには、多少のインチキやルール無視もいたしかたなし、というモラルハザートが広がり、そこに異を唱えることさえも許さない「同調圧力」もまん延する。これが昨今続く、データ不正や改ざんの本質である。
実際、IHIの不正で、第三者検証委員会が調査をしたところ、工場内では「おかしなことをおかしいと指摘する」「できないことをできないと言う」のが困難だったという証言が寄せられている。
だが、このような「同調圧力」が当たり前になった組織が本当に恐ろしいのは、「内向き」になりすぎて、もはや誰のために「ものづくり」をしているのかさえも分からなくなるほど、自分を見失ってしまうことにある。
今の東芝が、まさにその真っ只中である。
約1000人の早期退職を含め、連結従業員の5%に相当する7000人規模の人員削減にも踏み切るこの会社は、復活のためにと昨年、「東芝Nextプラン」なるものをぶちまけた。そこには、「世界有数のCPSテクノロジー企業を目指す」とこの期に及んで、まだ「技術」に固執していることにも驚くが、それよりも衝撃的なのは、資料の冒頭で以下のようなスローガンがデカデカと掲げられていたことだ。
「2人の創業者のベンチャースピリッツを蘇らせる」
日本では、山で道に迷った時にとにかくスタート地点に戻れみたいなノリで、「原点回帰」をすれば何事もうまくいくとされているが、こういうビジョンを掲げる世界的企業はほとんどいない。苦しくなると創業者を引っ張り出すのは、戦争に負けそうになると「神風」とか騒ぎ出すように、自分を見失った者が最後にすがる「精神論」だからだ。
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