クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

日産にZ旗を掲げた覚悟はあるか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)

» 2020年09月28日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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経営陣の処遇というモラルハザード

 モラルハザードとしてはもう1つ看過できないのが、この苦境をもたらした経営陣の退任時報酬である。

  • 西川廣人氏(元CEO) 2億9800万円(さらに退職慰労金として1億1400万円)
  • 山内康裕氏 (元CEO代行) 4億1900万円
  • 軽部博氏(元CFO) 2億4900万円
  • 川口均氏 (元副社長)2億1000万円
西川廣人 元CEO(写真 ロイター)

 一般論として、日本の経営者の収入が低すぎるという問題はある。しかし、それは利益を上げることが前提だ。実績を残せないなら話は別だ。ましてやもしも税金で救済されるとなれば、在任期間に経営危機をもたらした経営陣の処遇として、これに納得できる人は少ないだろう。ちなみに株主配当は、19年度が中間配当の10円のみ、20年度はゼロの見通しだ。株主は今すぐにでも文句を言う権利がある。

 もちろんこの13億円足らずの金で会社が復活するわけではないが、たかが700億を工面するのに従来の10倍を超える金利を払わねばならない状況を考えれば、微々たるものとはいえない。有価証券報告書によれば、同業他社への転職を禁じ、守秘義務を守ることへの対価だというが、その説明が国民に届くかどうかだ。

 そして何よりも国有化は、日産自身にとってもおそらく幸せではない。だから、「各員一層奮励努力」の覚悟をもって、何とか自力で復活してほしいのだ。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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