この状況をどう読むかだが、そもそも7月の社債発行は、償還時期がきた社債の順当な差し替えだ。つまり社債を返す原資を新たな社債で手当てするという話で、これは経営の常道である。問題は金利の上昇だが、これをどう評価するかは慎重を要する。
経営にとって一番怖いのは、どこからも借りられなくなることで、原則的には金利そのものではない。キャッシュフローが持てば会社は潰れない。つまり支払いが続けられるかどうかが本質的な問題で、プレミアム金利を払うとはいえ、ちゃんと調達できているのは、ルビコン河を越えてはいないことを意味し、一応日産ブランドの威光がまだあるということになる。
さて、金策をするわけだから、肝心の手元資金はどうだろう? 対前年同期比でフリーキャッシュフローが8157億円の減少だ。自動車事業そのものは、ちょっとえらいことになっているが、一方で販売金融事業の方でマイナスを埋め、結果的にマイナス186億円まで戻している。これは過去に売ったクルマの代金回収だから、四半期毎に大変動するようなことはない。
かつて、なりふり構わず販売奨励金を積み上げて売りまくった成果はちゃんと貯金として残っていたのだ。ただし、それは過去の資産。今後長期にわたってクルマが売れなければ、この貯金箱からの実入りは、ボディブローのように効いて、目減りしてくる。資金繰りのためには、当たり前だがとにかく売ることだ。
つまり今の日産は未来への投資を用意するのに、高い金利を払わねばならなくなったが、しっかりクルマを売れば、まだ立て直す余地は十分あると理解してもらえればいいだろう。しかしながら、金利だけでなく売上高からみても、これ以上の借り入れは危険水域に入る。
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