この状況をどう読むかだが、そもそも7月の社債発行は、償還時期がきた社債の順当な差し替えだ。つまり社債を返す原資を新たな社債で手当てするという話で、これは経営の常道である。問題は金利の上昇だが、これをどう評価するかは慎重を要する。
経営にとって一番怖いのは、どこからも借りられなくなることで、原則的には金利そのものではない。キャッシュフローが持てば会社は潰れない。つまり支払いが続けられるかどうかが本質的な問題で、プレミアム金利を払うとはいえ、ちゃんと調達できているのは、ルビコン河を越えてはいないことを意味し、一応日産ブランドの威光がまだあるということになる。
さて、金策をするわけだから、肝心の手元資金はどうだろう? 対前年同期比でフリーキャッシュフローが8157億円の減少だ。自動車事業そのものは、ちょっとえらいことになっているが、一方で販売金融事業の方でマイナスを埋め、結果的にマイナス186億円まで戻している。これは過去に売ったクルマの代金回収だから、四半期毎に大変動するようなことはない。
かつて、なりふり構わず販売奨励金を積み上げて売りまくった成果はちゃんと貯金として残っていたのだ。ただし、それは過去の資産。今後長期にわたってクルマが売れなければ、この貯金箱からの実入りは、ボディブローのように効いて、目減りしてくる。資金繰りのためには、当たり前だがとにかく売ることだ。
つまり今の日産は未来への投資を用意するのに、高い金利を払わねばならなくなったが、しっかりクルマを売れば、まだ立て直す余地は十分あると理解してもらえればいいだろう。しかしながら、金利だけでなく売上高からみても、これ以上の借り入れは危険水域に入る。
- 完敗としか言いようがない日産の決算
ズタズタの決算内容だった日産。一つの要因は、北米で販売促進費用(インセンティブ)をつぎ込んで売り上げを伸ばそうとしたことにあるのではないか。対策として、22年にはモデルラインアップの半数を電動化車両にするというがバッテリー供給は大丈夫か。20車種の新型を出すというのも、短期間で作られる新車は大丈夫なのか?
- 強いトヨタと厳しい日産
日本の自動車メーカーは調子が良いのか悪いのか、とくにここ数年中国の景気悪化が伝えられており、その影響が心配される。全体を見て、とにかくこの逆境下で強さに圧倒されるのがトヨタで、ちょっと言葉を失う厳しさに直面しているのが日産だ。スズキとマツダは日産を見るとまだ救われるが、下を見て安心していていい状況とは思えない。概要としては各社そろって、程度の差はあれど逆境である。
- 「20モデル以上の新型車」はどこへ? どうなる日産自動車
財務指標はほぼ全滅という地獄の様相となった日産の決算。問題に対してすでに適切な手を打ってあり、今決算には間に合わなかったものの、回復を待っているというのならともかく、ただひたすらに悪い。そうした全ての状況に対して、ようやく大筋の方針が出来、これから個別の具体策策定に着手するという状況で、未来が全く見えない。念のためだが、決して未来がないといっているのではない。日産の未来は現状、皆目見当がつかないということだ。
- ゴーン国外逃亡で考える、日産前社長の西川氏が逮捕されない理由と検察の劣化(前編)
ゴーン氏の会見後も毎日のように新しい動きが報じられたが、そもそもの発端を理解している人は少ないだろう。世間では「給料をごまかして逮捕された挙句に国外逃亡したとんでもないヤツ」と認識されていると思うが、実際はそのような単純な話ではない。なぜゴーン氏が国外逃亡を選んだのか、なぜ西川氏と検察もまた問題があると断言できるのか、複雑に絡んだ事件を整理してみたい。
- トヨタの決意とその結果
残念ながらリーマンショックまでの10年間、トヨタは調子に乗っていた。毎年50万台水準で増産を続け、クルマの性能を無視してまで工数を削っていった。しかし結果、リーマンショックの時は15%の生産ダウンで、4600億円の赤字を計上した。そこからカイゼンを積み重ねたトヨタは、コロナ禍にあっても四半期で黒字を保てるほどの強靭(きょうじん)化を果たした。
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