クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

日産にZ旗を掲げた覚悟はあるか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2020年09月28日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 この状況からの逆転の大勝負を挑む乾坤一擲(けんこんいってき)の原資を調達する手段が、外貨建社債だったわけだ。リターンに応じてリスクを取る習慣がある外貨建て社債マーケットで、80億ドル(約8400億円)と20億ユーロ(約2460億円)の手当てをしたということだろう。どうやらこれらの外貨建債は無事に売れたらしい。ということで当座の資金流動性は確保できたと見ていいだろうが、もう後がない。

 万が一追加でキャッシュを用意しなければならなくなったとしても、これ以上の金利を払うのは困難だ。先ほど金利は大問題ではないとは書いたが、それは借り入れ総額との見合いだ。例えば10年もの社債の金利が4.810%ということは、借金を返すためにはそれ以上の利益率がなくてはいけない。19年の本決算の営業利益率はマイナス0.4%。18年が2.7%、17年が4.8%。直近5年で最良だった15年が6.5%と、総額1兆円ともなると、この社債を償還していくのはそれなりにイバラの道である。

 一応未使用のコミットメントライン(銀行への借り入れ予約)が1.3兆円あることにはなっているが、新型車を次々出さないと復活プランが描けない日産は、開発費も販促費も例年以上に計上しなくてはならない。進軍をやめれば討死だ。

 さて、今後の話だ。グローバルに見て、ひとまずコロナ騒動のピークは抜けているので、第1四半期ほどの悪材料はないだろうが、さりとて簡単に黒字転換できるとも思えない。コロナ前から赤字なのだ。そこにフェアレディZが登場したことはどういう意味を持つのだろうか?

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