マイクロソフト日本法人の初代社長・古川享が取り組む次世代支援 本格始動する「明るい大人の悪巧み団」とは?ビル・ゲイツが最も信頼した日本人(2/3 ページ)

» 2021年05月29日 08時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

「JETBOOK作戦」など社会貢献事業を支援

 古川氏が支援の対象として意識しているのは、新しい可能性を持つとともに、社会貢献にもつながる事業だ。その一つが、児童養護施設で暮らす子どもたちに1万冊の本を贈る「JETBOOK作戦」。2歳から18歳まで児童擁護施設で暮らし、今年3月に施設を卒業し大学に進学した山内ゆなさんが発起人になっている。山内さんが自身の経験から「施設の子どもたちがいろいろな情報に触れ、新しいことを発見していける機会を作りたい」と考えて始めたものだ。

JETBOOK作戦」発起人の山内ゆなさん

 「JETBOOK作戦」は、4月20日から「READYFOR」でクラウドファンディングを展開。人生で出会った最高の一冊とその理由を記入して支援をすると、その本が施設に贈られる仕組みだ。支援の募集は5月31日までで、5月29日現在の支援総額は第一目標にしていた3000万円を超えた。一方で、1万人の支援によって1万冊を施設に届けることも目標にしていて、支援者は4400人にとどまっていることから、最後までさらなる支援を呼びかけている。

「JETBOOK作戦」の仕組み

 古川氏は、音声SNSのClubhouseで交流をしている時に「JETBOOK作戦」のプロジェクトを知ったという。その趣旨に賛同して、多くの仲間たちにプロジェクトを広めている。「明るい大人の悪巧み団」でも継続して支援をしていく考えだ。その理由を、古川氏はこう語る。

 「クラウドファンディングを金儲(もう)けのためにやっている人がたくさんいる中で、もっと本を読みたかったと話す彼女たちの思いに共感しています。金額で3000万円、支援者数で1万人を達成するのはかなり大きなハードルですが、金額よりもたくさんの人に児童養護施設のことを知ってもらうことを目的にしているので、支援する気持ちになりました」

 「JETBOOK」が支援を呼びかけるために活用した「READYFOR」は、2011年3月にサービスを開始した日本初のクラウドファンディングサイト。社会貢献を目的にした公益的な団体が利用できる、寄付型のクラウドファンディングだ。

 実は、代表者の一人の米良はるか氏は、古川氏の慶應義塾大学大学院の教え子でもある。社会貢献を目的にしながら順調に成長した「READYFOR」を、古川氏は次のように評価する。

 「クラウドファンディングの多くは、支援した金額が何に使われたのか分かりませんが、READYFORには最終的な使い道を支援者にレポートするシステムがあります。また、クラウドファンディングを活用した組織や個人に対しては、担当のアカウントマネージャーをつけて、弁護士や税理士の紹介など、プロジェクトが成功するための支援もします。『社会貢献にフォーカスを当てたクラウドファンディングを作りたい』と言っていた米良さんの思いが実現できていると思います」

前回のJETBOOK作戦で施設に贈られた本

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