マイクロソフト日本法人の初代社長・古川享が取り組む次世代支援 本格始動する「明るい大人の悪巧み団」とは?ビル・ゲイツが最も信頼した日本人(1/3 ページ)

» 2021年05月29日 08時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

 「引退したオヤジたちで集まって、自分が持つノウハウや退職金の一部を投じて、ベンチャー企業や個人を支援をしたい。目指しているのは“バーチャル書生制度”です」

 こう話すのは、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授を12年務め、昨年3月に退官した古川享氏。アスキー取締役を経て、1986年にマイクロソフト株式会社(現・日本マイクロソフト株式会社)の初代社長に就任するなど、日本のパソコンの草創期に指導的役割を果たした人物だ。2003年から米マイクロソフトの副社長に就任。退職後は慶應義塾大学でベンチャー支援やメディア研究に取り組んできた。古川氏は、米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツが最も信頼した日本人の1人と言われている。

 大学を退官した古川氏は、今後も起業などを志す若い人たちを支援したいとして、バーチャルな組織を立ち上げようとしている。構想しているのは「明るい大人の悪巧(わるだく)み団」。会社やNPOなどの組織ではなく、「引退したオヤジ=明るい大人」がゆるくつながって、明治時代の書生制度のように若い人を支援していく“バーチャル書生制度”だという。古川氏に、「明るい大人の悪巧み団」で実現しようとしている次世代支援について聞いた。

古川享(ふるかわ・すすむ)日本のパソコンの草創期よりアスキー、マイクロソフトと常にその中心にあって指導的役割を果たした技術者・経営者。 1954年東京に生まれる。1979年にアスキー出版入社、月刊アスキー副編集長を経て、1982年技術担当取締役に就任。1986年にマイクロソフト株式会社社長に就任し、DOS/V、Windowsなどの開発・普及に尽力した。2003年に米国マイクロソフト副社長就任。2006年に慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(DMC)、2008年同大学院メディアデザイン研究科(KMD)の教授に就任、2020年退官。自身の経験を生かしてベンチャー志望の若者の指導にあたっている。趣味は鉄道写真・模型

“バーチャル書生制度”で起業家を支援

 慶應義塾大学を退官した古川氏は、東京都渋谷区広尾に昨年7月オープンした「EAT PLAY WORKS」にプライベートオフィスを置く。食とウェルネスとワークカルチャーを融合したこの新しい施設を拠点に、近く正式に立ち上げる「明るい大人の悪巧み団」の構想を、イベントやYouTubeなどで発信している。

 「明るい大人」とは、古川氏のように引退した世代の人たちのこと。「悪巧み」は、応援したいと思った企業や個人に対して、自身が持つノウハウで支援し、時には投資することを指す。少し変わっているのは、バーチャルな組織を目指していることだ。

 「会社組織でも、社団法人でも、NPOでもなく、バーチャルでつながる組織ですね。20人から30人くらいの規模でスタートできると思います。『この会社は面白そうだから、相談に乗ってくれない?』と私が声をかけて、共感した人たちで支援をするスタイルです。

 アドバイスすることに加えて、『退職金の一部を出してもいいよ』という人たちが100万円単位で投資してファンドを作ります。それを1社に全部投資するのではなく、プロトタイプを作りたいと考えている企業や個人など数社に、500万円から1000万円レベルの支援をしていくイメージです。

 引退しても力が余っている人はたくさんいます。家にずっといても家族にうざいと思われますから、外に出て悪巧みしようという感じですね(笑)。また、支援する会社に毎日通っても、若い人たちからうざいと思われるのではないでしょうか。必要とされた時に相談に乗るような、あくまでゆるいつながりを考えています」

 「明るい大人の悪巧み団」の支援スタイルは、かつての書生から着想した。書生はもともと学業を修める時期にある若者を指す言葉だが、明治以降の日本では、高等学校や大学に通うために他人の家に下宿して、家事や雑用を手伝いながら勉強する若者が書生と呼ばれた。書生制度とも言われるこの仕組みを、バーチャルで実現しようという構想だ。

 「書生制度は大学などに通う学生を家で預かって、成功するために場所を貸してあげるイメージです。でも、今の時代は自分の子どもの教育だけでも大変で、自宅に書生の部屋を作って面倒を見るのは難しいですよね。そこでバーチャル書生制度のようなものを作るのが狙いです」

古川享著『僕が伝えたかったこと、古川享のパソコン秘史 (NextPublishing)』(インプレスR&D(インプレス))
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