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» 2021年06月08日 18時15分 公開

スパコン「富岳」にも利用、教育のDX化を支える学術ネットワークSINETとは? 国立情報学研究所の副所長に聞いた最速400Gbps!(1/4 ページ)

大学授業のオンライン化が滞りなく進んだ背景には、日本全国の大学の学術ネットワークを支える基盤、学術情報ネットワーク「SINET」の存在がある。SINETは国の研究組織「国立情報学研究所(NII)」が開発、運営するもので、900以上の大学・研究機関が加入している。同研究所の漆谷重雄副所長に、SINETの現状と課題を聞いた。

[河嶌太郎,ITmedia]

 新型コロナウイルスの影響は教育業界にも及んでいる。大学では従来の対面授業からZoomやGoogle MeetなどのWeb会議ツールを用いたオンライン授業へと切り替えるところも多い。

大学では従来の対面授業からZoomやGoogle MeetなどのWeb会議ツールを用いたオンライン授業へと切り替えるところも多い(写真提供:ゲッティイメージズ)

 こうなってくると、懸念されるのがネットワーク負荷の増大だ。1コマ90分の授業を動画によって相互にやりとりするとなると、1人あたり1Gバイト以上のデータ消費量になることも珍しくない。特に学生側の負担は大きく、大学側がモバイルルーターを貸し出すなどの対応策に迫られた。

 一方の大学側にとっては、授業のオンライン化によって一部で当初にサーバがダウンしてしまう問題は起こったものの、すぐに増強され、その後はスムーズにオンライン授業への移行が進んだとみられる。その背景には、日本全国の大学の学術ネットワークを支える基盤である学術情報ネットワーク「SINET」の存在があるのだ。SINETは国の研究組織「国立情報学研究所(NII)」が開発、運営するもので、900以上の大学・研究機関が加入している。同研究所の漆谷重雄副所長に、SINETの現状と課題を聞いた。

漆谷重雄(うるしだに・しげお)国立情報学研究所(NII)副所長。国立情報学研究所において、学術情報ネットワーク(SINET:さいねっと)の設計・構築・運用に従事。これまで、SINET3、SINET4、SINET5を担当。専門分野は、ネットワークアーキテクチャ、ネットワークシステム(以下、国立情報学研究所提供)

50Gバイトのブルーレイのデータが1秒で転送可能

 インターネットの歴史自体、もともと大学・研究機関同士を結ぶネットワークから始まっていることをご存じだろうか。SINETもこの歴史の流れを受けて形成されたもので、定期的なバージョンアップがなされていて、2016年4月以降は「SINET 5」というバージョンになっている。

 「SINET 5」では、全国で100Gbpsの高速ネットワークを実現している。家庭用インターネット回線の最大が現在は10Gbpsだ。100Gbpsというだけでも規格外である一方、「SINET 5」の東京〜大阪間では何と4倍の400Gbpsの高速通信を実現している。これは50Gバイトのブルーレイディスクのデータが1秒で転送できる速さだ。

 また、「bps」という通信容量の単位は速度だけでなく、回線の太さそのものも表している。20年のコロナ禍の時点で、「SINET 5」による「全国100Gbpsの通信回線」が備えられていたことは、大学のオンライン授業化が円滑に進んだ一因でもあるのだ。

 SINETの強みは高速で大容量のデータをやり取りできるだけではない。あらゆる場所からどのルーターにも接続できる冗長性も備えていて、低遅延も実現している。このため、インターネット回線の遅れによる操作の遅延が許されない医療用手術ロボットによる手術や、ドローンの円滑な操縦の実現にも寄与しているのだ。このように、回線が高速であるだけでなく、データの遅延の少なさもSINETの特徴といえる。

「SINET 5」の現状
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