大学・研究機関をはじめとした教育現場でもDXが進むとなると、懸念されるのは学術ネットワークの逼迫(ひっぱく)だ。こうした未来に対応する形で、現在NIIではバージョン6となる「SINET 6」の運用開始を22年度から予定している。
「SINET 6」では、東京〜大阪間のみで実現している400Gbpsの回線を、沖縄〜九州間の一部を除く全国に拡大する方針だ。拡大によって通信帯域も現状の100Gbpsから4倍になり、余裕を持ったLMSの運用が可能になる。
さらに、次世代のモバイル通信規格である5G通信との連携も予定されている。これにより、医療資源が乏しい僻地でも、医療用手術ロボットによって遠隔での手術や治療を受けることも夢物語ではなくなるのだ。
「400Gbps化によって、極端な例だと、フルスペック8Kの画質でリアルタイムに現場を確認しながら、低遅延で装置を遠隔操作することなどができます。ネットワークを介してあらゆるアプリケーションを通せるようになり、高い臨場感の実現により遠隔手術などの円滑な実施も期待されます」(漆谷副所長)
だが、400Gbps化を近い未来に達成したとしても、通信の大容量化はまだ終わりがないという。漆谷副所長が未来を語る。
「実は、400Gbpsをもってしてもスーパーコンピューター『富岳』からは早期のネットワーク増強を求められています。以前の『京』が100Gbpsを使い切ったように、『富岳』では早々に400Gbpsを使い切ってしまうことが想定されます。データ量の増加は加速度的に進みますから、将来的には800Gbps、1.6Tbpsといったさらなる回線の増強が必須になると思います」
まさに技術の進歩には終わりがないというわけだ。コロナ禍を機に、学術機関でもDXが進んだが、その底流を支える技術の進化はこれからも進んでいく。
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