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スティーブ・ジョブズが頼った“切り札”――「デザイン思考」がもたらすこれだけの“革新”Google 、Apple、サムスンでは常識(1/5 ページ)

» 2019年06月10日 05時00分 公開
[石川俊祐ITmedia]
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編集部からのお知らせ:

本記事は、書籍『HELLO,DESIGN 日本人とデザイン (NewsPicks Book) (著・石川俊祐、幻冬舎)』の中から一部抜粋し、転載したものです。


 デザイン思考は、ビジネス用語の中でもっとも「誤解」されやすい言葉だ。ぼくは常々そう感じています。コモディティ化、シンギュラリティ、アライアンス、KPI、コンバージョン……。これらは、 「デザイン思考」より、一見して意味が分かりづらい言葉です。だから、これらにはじめて触れたとき、ぼくたちは何の先入観も持たず、理解に努めようとします。つまり、いきなり「誤解」することはありません。ところが、本書のテーマである「デザイン思考」はちょっと違います。

 「デザイン」にしろ「思考」にしろ、言葉として馴染(なじ)みがある。だから、それら2つを組み合わせた「デザイン思考」という言葉も、なんとなく意味が分かった気になる。ビジネスシーンにもだいぶ浸透してきて、最先端のIT企業がこぞって取り入れているのも聞いたことがある。でも、 「一言で説明して」と言われたら、答えに窮してしまう――そんな人が少なくないのではないかとぼくは思うのです。

 いま本書を手に取られているみなさんの中にも、まだまだ次のように捉えている方がいらっしゃるのではないでしょうか?

 「モノづくりに使う思考法でしょ?」

 「いわゆる『クリエイティブ系』の人のものでしょ?」

 「これからの時代、機能よりもデザインが大事、という話でしょ?」

 しかも、デザイン思考は「Google やApple、サムスンでも採用されている手法」といった文脈で紹介されることも多いから、またややこしい。 「イノベーションをもたらし、世界を変えるために必要な思考法」という言葉に「引いて」しまう人も少なくありません。

phot 若かりしころのスティーブ・ジョブズは、「デザイン思考の生みの親」であるIDEOの前身企業に、初代マッキントッシュのマウスのデザインを依頼した(写真提供:ロイター)

誤解だらけのデザイン思考

 創造性に富んだ先進的なエクセレントカンパニー、もしくはキラキラ輝くベンチャー企業で働く人だけ知っておけばいい思考法だと、さらに誤解されたりするんですね。自分には関係ないしどうせ使いこなせない、と。このように誤解の余地にあふれているのが「デザイン思考」なのです。

 しかし、本当のデザイン思考は「クリエイティブ系」で働く一部の人のためのものでも、エクセレントカンパニーやベンチャー企業で働く人だけのものでもありません。もちろん、色やかたちといった、一般的な「デザイン」に関する話でもありません。

 これからの社会を——もはやロジックだけでは正解を導き出せない時代を生きる全てのビジネスパーソンに必須の、「思考のメソッド」です。

 では、どんなメソッドなのか。

 トップデザイナーたちが実践している思考法を抽出し、理論化し、それぞれの仕事(企業経営や商品開発はもちろん、営業やマーケティングに至るまで)に転用することによって、これまで誰も思い浮かばなかった、優れた答えを導き出す――。これが、デザイン思考の大枠です。

 と、このような説明だと、さらにこむずかしく聞こえるかもしれませんね。もっと簡単に言えば、非デザイナーのあなたに「トップデザイナーの目玉と脳みそ」を開放するメソッドが、デザイン思考なのです。

 百聞は一見にしかず。

 まずは、実際に以前ぼくが手掛けた、デザイン思考を象徴するプロジェクトを紹介しましょう。

phot 「あっ」と驚く商品やサービスを世に出すために必要な思考法とは……(写真提供:ゲッティイメージズ)
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