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スティーブ・ジョブズが頼った“切り札”――「デザイン思考」がもたらすこれだけの“革新”Google 、Apple、サムスンでは常識(3/5 ページ)

» 2019年06月10日 05時00分 公開
[石川俊祐ITmedia]
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人々の無意識下にある欲求を探り当てること

 「自動車保険を検討している人たちが求めているのは、わずかな差額ではなく『リアルな安心』なんじゃないか?」

 「じゃあ、どうすれば事故のときはもちろん、普段から安心を感じられるだろう?」

 こうした問いを立て、チームで多数のアイデアを出しデザインしたのは「お守りボタン」でした。ポチッと押したらすぐにスーパーマン……ではなく警備会社の担当者が駆け付けてくれる、魔法のボタン。

 魔法と言っても仕組みはシンプルで、ボタンを押すとスマホのアプリが起動し、自動的に警備会社に連絡が飛ぶ、というアイデアです。さらに保険会社にも契約内容と現在地が伝わり、そのまま担当者とつながれるようにもなっている。もちろん証書の番号などは不要です。

 ただ「ボタンを押す」ワンアクションさえこなせば、事故処理のスペシャリストが駆け付けてくれる。自分のことをよく知る味方と話すことができる。この安心感は、いざというときのユーザーのストレスを大きく緩和します。また、「触(さわ)れないサービス」である保険を「触れるかたち」にデザインしたことで、事故を起こす前の「お守り」のような存在にもなれるというわけです。

 ここでデザインしたのは、ただのモノ(ボタン)ではありません。人々の無意識下にある欲求を探り当てることによって、自動車保険のあたらしいサービスの在り方をデザインしたのです。このプロジェクトに要した時間は、たったの3カ月でした。

 改善や差別化といった「地続き」のアイデアではなく、他の人がなかなか思い付かないような「飛び石」のアイデアを、社会の変化のスピードに負けずに生み出せる。その結果、あたらしい未来を描く。

 これが、デザイン思考でできることです。

 つまり、なにかしらの課題を抱え、現状をブレークスルーしたいと考える全ての人が活用できる思考法なんですね。 「クリエイティブ系」やイケてる一部のビジネスパーソンのためのツールではないことを、分かっていただけましたか?

phot 人々の無意識下にある欲求を探り当てることで、安心の「ボタン」を提示できた(写真提供:ゲッティメージズ)

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