「自動車保険を検討している人たちが求めているのは、わずかな差額ではなく『リアルな安心』なんじゃないか?」
「じゃあ、どうすれば事故のときはもちろん、普段から安心を感じられるだろう?」
こうした問いを立て、チームで多数のアイデアを出しデザインしたのは「お守りボタン」でした。ポチッと押したらすぐにスーパーマン……ではなく警備会社の担当者が駆け付けてくれる、魔法のボタン。
魔法と言っても仕組みはシンプルで、ボタンを押すとスマホのアプリが起動し、自動的に警備会社に連絡が飛ぶ、というアイデアです。さらに保険会社にも契約内容と現在地が伝わり、そのまま担当者とつながれるようにもなっている。もちろん証書の番号などは不要です。
ただ「ボタンを押す」ワンアクションさえこなせば、事故処理のスペシャリストが駆け付けてくれる。自分のことをよく知る味方と話すことができる。この安心感は、いざというときのユーザーのストレスを大きく緩和します。また、「触(さわ)れないサービス」である保険を「触れるかたち」にデザインしたことで、事故を起こす前の「お守り」のような存在にもなれるというわけです。
ここでデザインしたのは、ただのモノ(ボタン)ではありません。人々の無意識下にある欲求を探り当てることによって、自動車保険のあたらしいサービスの在り方をデザインしたのです。このプロジェクトに要した時間は、たったの3カ月でした。
改善や差別化といった「地続き」のアイデアではなく、他の人がなかなか思い付かないような「飛び石」のアイデアを、社会の変化のスピードに負けずに生み出せる。その結果、あたらしい未来を描く。
これが、デザイン思考でできることです。
つまり、なにかしらの課題を抱え、現状をブレークスルーしたいと考える全ての人が活用できる思考法なんですね。 「クリエイティブ系」やイケてる一部のビジネスパーソンのためのツールではないことを、分かっていただけましたか?
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