コラム
» 2019年06月10日 05時00分 公開

Google 、Apple、サムスンでは常識:スティーブ・ジョブズが頼った“切り札”――「デザイン思考」がもたらすこれだけの“革新” (4/5)

[石川俊祐,ITmedia]

デザイナーの「目玉」と「脳みそ」と「マインド」を拝借する思考法?

 繰り返しになりますが、デザイン思考はデザイナーのセンスやテクニックを学ぶものではありません。あくまで学ぶのはデザイナーのものの見方であり、考え方。優れたデザイナーたちは、デザインするときにどこを見てなにを考え、どうやって解くべき課題を見つけ出し、どうやってそれを解決していくのか。そんな「目玉」と「脳みそ」の話なのです。

 ここでひとつ、疑問が生じたかもしれません。

 「トップデザイナーの『目玉や脳みそ』をモデル化してなぞることなんて、可能なの?」

 その難題に正面から挑み、大きな成功をおさめているのがIDEOという組織。ぼくが2017年まで所属していた企業で、デザイン思考の生みの親でもあります。

 かつて「世界でもっともイノベーティブな企業」にも選ばれたことがあるIDEOは、青空の美しいカリフォルニア州に本社を置き、日本を含めグローバルにオフィスを展開しているコンサルティングファームです。

 しかし、ただのコンサルと違うのは、 「デザイン」コンサルティングファームだということ。デザインと言っても、建物やインテリアといったモノ、パッケージのビジュアルを「おしゃれな感じに整えるコンサル」ではありません。デザイン思考を用いて大企業からベンチャー企業、公的機関などとともに、さまざまなイノベーションを起こしている企業です。

 ふつうのコンサルでは導き出せない「あっ」と驚く商品やサービスを世に出し、未来を変えてきた。いわば、IDEOは「デザイン思考家集団」と言えるでしょう。

 IDEOの歴史をごく簡単にたどると、創業者の一人、デビッド・ケリーがガレージで開いたデザイン会社がその前身です(1991年に3つのデザイン会社が合併をしてIDEOが誕生します) 。若かりしころのスティーブ・ジョブズが初代マッキントッシュのマウスのデザインを依頼したことでも知られるように、はじめはプロダクトエンジニアリングを事業の中心に据えていました。

 しかし、2000年代に入り、IDEOは大きな転機を迎えます。モノづくりの生産拠点は人件費が安い中国などの国外へ移り、米国をはじめとする先進国に「サービス化」の波がやってきた。ハードなモノでなく、アプリの開発やその運用、コンサルといった「サービス」をビジネスの柱に転換する企業が増えはじめたのです。

 そんな新しい時代を迎え、あらゆる業種業態の企業からIDEOに相談が寄せられるようになりました。

 「目には見えないサービスを提供する上で、ユーザーの心をどう捉えればいいのか?」 「ビジネスをどうデザイン(設計)すればいいのか?」

 その中でデビッドらは、IDEOのデザイナーがアイデアを生み出す際に用いている思考メソッドが、どんな分野にも使えることに気付きます。そこで「ビジネスデザイン」という領域に踏み込み、自分たちの思考メソッドを概念化。「デザイン思考」というメソッドをつくり出しました。

 このメソッドは、モノやサービスを生み出す仕事に就いているビジネスパーソンに熱烈に支持されました。それだけでなく、これまでデザインやクリエイティブとは無縁のように思われていた業種の人、BtoBビジネスに携わる人、NPOや行政にまで活用できることから、またたく間に世界中に広がっていったのです。

phot 「デザイン思考」はクリエイティブとは無縁だと思われていた業種の人にまで浸透した(写真提供:ゲッティイメージズ)

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