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スパコン「富岳」にも利用、教育のDX化を支える学術ネットワークSINETとは? 国立情報学研究所の副所長に聞いた最速400Gbps!(3/4 ページ)

» 2021年06月08日 18時15分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

クラウド化によって「大学のDX」が推進

 こうした国内随一ともいえるネットワーク網は、大学や研究機関だけで使われているのではない。民間企業との産学連携のプロジェクトでも活用されているのだ。また、SINETは商用クラウドサービスと直結していて、富士通やNTT、IIJ、さくらインターネットなどの国内企業から、グーグルやアマゾン、日本マイクロソフトといった外資系企業まで33社に広がっている。

 SINET上のクラウドの発展は、大学・研究機関のDX(デジタルトランスフォーメーション)にも重要や役割を果たしている。SINET直結のクラウドにデータやサービスがあることで、セキュアに利用できるようになるためだ。NIIの漆谷重雄副所長はこう話す。

 「大学や研究機関は、SINET経由でクラウドと直接つながることによって、キャンパス内にその機能を取り込むような形でクラウドサービスを利用できるようになりました。直結したクラウドサービスには豊富なメニューがあり、全国のどの大学からでも利用できるので、今後はいろいろな分野でデジタル化が進むことでしょう」

 コロナ禍によって大学での対面授業が困難になり、オンライン授業化する際に役立った基盤サービスがLMS(Learning Management System)だ。LMSは各授業で使用する教材を学生と共有するシステムで、その教材にどんな学生が何回アクセスしたか、学生がその教材でどの程度学習したかを教員側が把握できる仕組みになっている。学生の学習指導の可視化、効率化ができるわけだ。まさしく大学授業のDXに一役買っているシステムといえる。

 現在、このLMSを大学だけでなく、高校をはじめ、中学校や小学校にも普及させようとする取り組みが進んでいるのだ。LMSではネットワークにアクセスする端末が必要なため、全生徒にiPadなどタブレット端末を購入させたり、貸与したりする形がとられた。一部の小中高等学校で実証実験が実施されている段階にあり、将来的には全ての学校でLMSを活用した授業が展開されることが期待される。漆谷副所長は話す。

 「以前はあまり目立たない存在だったのですが、コロナ禍によって全国の大学で授業のオンライン化が進み、LMSの重要性が急速に高まっています。LMSの充実化が今後も図られていくことは間違いないでしょう」

SINETは商用クラウドサービスと直結していて、富士通やNTT、IIJ、さくらインターネットなどの国内企業から、グーグルやアマゾン、日本マイクロソフトといった外資系企業まで33社に広がっている

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