今回のシリーズDラウンドでは、海外投資家を中心に156億円の資金調達が行われ、登記簿情報を基にした推計では企業価値は約1700億円のユニコーン企業となった。
バリュエーション指標として比較対象となることが多いPSR(時価総額/売上高)と同様に、企業価値(ないしは時価総額)がARRの何倍となっているかを現わすARR倍率では、SmartHRの評価は37.7倍である。
ARR倍率 = 企業価値(時価総額) / ARR
Smart HRのARR倍率 = 1700億円 / 45億円 = 37.7倍
6月8日の終値で算出をした国内SaaS企業のARR倍率は、freeeの44.6倍が最も高く、ラクス29.6倍、Sansanは17.2倍など、投資家からは既にARR100億円を超えるトップグラスのSaaS企業をしのぐ期待が寄せられていることが分かる。
この高い評価の根拠は、やはりSmartHRの成長率の高さに他ならない。
以下の図は、ARR額とARR成長率をプロットした散布図だ。成長率はARRが増加するにつれて減衰することが通例だが、ARR100億円に達したタイミングでも成長率30%を維持できる成長率をプロットしたのが、図中の曲線になる。
既にARR100億円を超えている企業はこの曲線を上回っているが、近年IPOを行った企業であっても、この成長速度を上回ることは容易ではない。
それに対し、SmartHRが今回公表した「ARR45億円、YonY+100%」という実績は、この曲線のはるか上を通過していることが分かる。直近において国内外のSaaS企業価値は成長率への偏重が著しく、SmartHRは「超ハイグロース」企業としての評価を受けている。
またこのような高い企業価値は、数年後のIPOだけでなく10年先をも見据えたロングスパン投資を担える海外投資家から資金調達を行えたことも要因の1つとして考えられる。
年初にCEOの宮田氏はSNSで、2021年のIPO観測を否定していたが、未上場の大型資金調達を担う投資家が依然と比べ物にならないならないほど存在感を示している環境の変化も「規格外の和製SaaS企業」を生み出す要因となった。
今までのモメンタムを維持しつつ、真にグローバル級のIPOを迎える初の国内SaaS企業となるか、今後も熱い注目を送りたい。
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