ホテル業界復活のカギは「朝食」にあり? コロナ禍でヒルトンが進めた115項目の改善連載・瀧澤信秋「ホテルの深層」(3/4 ページ)

» 2021年06月11日 06時00分 公開
[瀧澤信秋ITmedia]

「コストを落とす考え」を変更し原価を”上げる”戦略に

 筆者は、ホテルの朝食ブッフェを見るときに「ソーセージ」と「焼き鮭」のクオリティーに注目している。いずれも朝食ブッフェでは定番メニューにして、おいしさの比較がしやすいことがその理由だ。

 鮭の切り身・ソーセージいずれも業務用食材の卸値が分かりやすく、仕入れ原価を上げるとリアルに食感が変わる。鮭でいえばふっくらジューシーに、ソーセージならば”パリッシャキッ”が際立つ。以前は“残したい”と思う同ホテルのメニューだったが、劇的に進化しており、おかわりするくらいのクオリティーに驚いた。また、卵料理は実演コーナーが賑わっており、蟹爪の乗ったオムレツも感動的。

 担当者によると「これまではいかにコストを落とすかという方向で考えていたが、発想を切り替えいずれも原価を相当上げた」という。

充実させた実演コーナー(筆者撮影)

 朝食で利益を出そうというのは決して褒められたものではないと、ある人気ホテルの朝食担当者から聞いたことがある。「基本的に朝食は宿泊プランとしてブレイクダウンし売られているが、朝食で利益を出そうとしてもたかが知れている」「赤字ギリギリまで原価とクオリティーを上げると必ず評判は連動し、結果として宿泊単価も上がっていく方向になる」と話す。

 食事以外では、表記やポップが分かりやすく明瞭に置かれているのが印象的だ。スタッフはアドリブも交えながらゲストを案内し、テーブル対応が丁寧で素晴らしい。以前は変な方向に向いていた足元のディスタンスプレートは固定され、テーブルタップの配線もキレイに改善されていた。こういう部分は、日々現場で仕事をしていると意外な盲点かもしれない。

付加価値を求める朝食(筆者撮影)

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