九州新幹線西九州ルート、並行在来線問題の解決と「幅広い協議」の行方杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)

» 2021年06月18日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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並行在来線分離方針はフル規格「候補」にプラス

 6月14日、政府与党新幹線プロジェクトチームにおいて、西九州ルートの検討委員会が「並行在来線の経営分離を前提とせず、JR九州が運行を維持することが不可欠」「佐賀駅を通るルートが適当。しかし佐賀県が示した3ルートは別途検討する」などと報告した。

 これでひとまず並行在来線問題はJR九州が維持する方針に定まった。JR九州も即日コメントを発表し「必ずしも経営分離を前提とせず、佐賀県等から具体的な課題認識のご意見等を拝聴しながら、真摯に議論を深めたい」とコメントした。

 佐賀県は「フル規格の前提がないので並行在来線問題は検討できない」としていたけれども、少なくとも「幅広い協議」の議題の1つであるフル規格については懸念が解消され、5案の中で有力な位置についたといえそうだ。

 注意深く報道や発表を追っていくと、佐賀県は「『幅広い協議』の結果、納得できればフル規格に合意する」とも読める。しかし、結果としてフル規格になるとしても、フル規格前提の議論ではなく、比較検討の結果であることが重要だ。まずはスジを通して議論を進めるべきだ。

 そのためには、まずは政府側のしかるべき責任者が、これまでのフル規格押し売り姿勢を謝罪し、ゼロから丁寧に佐賀県にプレゼンテーションして、納得できる結果を得ればいいと思う。フル規格新幹線の実現に向けて、政府と佐賀県の交渉力に期待しよう。

 私の営業経験でいえば、頭を下げようがプライドをズタズタにされようが、互いの利益が最大となる結果を出せれば“勝ち”だ。

与党プロジェクトチームの内容を受けたJR九州のコメント。在来線分離にこだわらず、「幅広い協議」を尊重すると明記

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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