ブルーオーシャン戦略の基本は、差別化だ。同業他社にはない魅力を持った売り物を、いかにマーケットへ提供できるかが肝となる。一例として、僕の手掛けている書店ビジネスを挙げよう。
「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS」というリアル店舗を長年、経営している。内装は徹底的にハイセンスにこだわり、カルチャーやビジネスなど、多彩な分野の先端を捉えた新刊をそろえている。蔦屋書店などよりも少し早く開業した、おしゃれ書店の先駆けだ。
本を売るだけではない。店舗の裏に、月額制のシェアオフィスを組み合わせた。本に囲まれたスペースで仕事したいという、意識の高いお客さんのニーズを満たしている。
また、おしゃれな内装がファッション誌や女性誌からも人気で、撮影スタジオとしても、たびたび利用してもらっている。本に囲まれた空間を生かして、セミナーや限定のスナック、トークショーなど、集客イベントでも収益を上げている。レンタルボックスや、雑貨販売でも一定の儲(もう)けをキープできた。
書店ビジネスは、全ての販売ビジネスの中でもレッドオーシャンにあり、近年は衰退産業とされているが、決して負けが決まっているわけではない。
リアルスペースを生かしたブランド戦略の構築で、収益は上げられる。本を売る以外にお金を落としてもらえる方法を考え抜くことで、結果は出せるのだ。お酒が飲めるトークイベントで集客に成功している書店は、他にも下北沢の「B&B」など、いくつもある。
レッドオーシャンの中でも、ブルーオーシャンを見つけることは不可能ではない。考えて、考えて、考え抜けば、活路は見えてくる。「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS」はコロナ禍の前に、黒字経営に乗せることができた。この時代には異例の成功のようで、同業者に驚かれた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング