新型コロナウイルスの感染拡大によって日本中のあらゆる企業が在宅勤務、出社率の削減を余儀なくされている。それに伴いWeb会議も増え、同じ会社や同じ部署であっても社員同士が直接顔を合わす機会は減った。そこで問題になっているのが、若手社員のマネジメント方法だ。
就職・転職情報を提供する学情(東京都中央区)が、企業の人事担当者に実施したアンケート調査の結果によると、「在宅勤務・テレワーク」の実施率は約6割だった。若手社員が在宅勤務をする際に課題になる点を尋ねると、「モチベーションの状態をつかみにくい」(77.6%)という回答が最も多く、「報連相などのコミュニケーション不足」(65.8%)、「作業の進捗状況や成果の把握が難しい」(56.0%)と続いた。
コロナ以前から新卒の離職率3割は問題となっていて、リモートワークの普及によりさらにマネジメントが難しい時代となった格好だ。そんな中、優秀なクリエイターやプロデューサーたちを率い創業5年目ながら業界にインパクトを与えている広告・事業開発の会社がThe Breakthrough Company GO(東京都港区)だ。JINS、ミクシィ、キヤノンなどの広告、新規事業を手掛け、多くの成果を生んでいる。
同社の代表取締役で PR・クリエイティブディレクターの三浦崇宏さんに若者のモチベートやマネジメント方法について聞いた。
――ビジネスプロデューサーやインフルエンサーなど9人と対談した著書『「何者」かになりたい 自分のストーリーを生きる』(集英社)では、ホテルプロデューサーの龍崎翔子氏やABEMA Primeプロデューサーの郭晃彰氏をはじめ、三浦さんが10〜30代の若手起業家やクリエイターたちと対談しています。話す中で若手に気付きを与えていて、まるでコーチングをしているようにも感じました。三浦さんは若手社員とコミュニケーションをとる際、何に気を付けていますか?
社会環境が変化したことにより、若手をマネジメントするのが非常に難しい時代になりました。だからこそ「自分が経験したものとは違う競技の選手をマネジメントする」と思った方がいいと思います。
ぼくは新卒から10年間、博報堂に在籍していました。ぼくが入社する少し前までは、組織は基本的に年功序列の価値観によって成立していました。例えば、CMを2本制作した若手よりも、100本制作した上司の方が発言に説得力もあり、若手もそれに従っていれば自ずと成果が出ていた感じです。
しかし、この10年であまりにもメディア環境が変わりました。例えば「Twitterでバズる企画を考えて欲しい」と依頼を受けた際に、社会人2年目の若手と、20年目の上司とではアイデアが変わってきます。なぜなら、少なくともTwitterのことであれば若手の方が深く理解していることが多いからです。
この際に、年長者が若手に助言するといった「経験によるマネジメント」をすることは、言い換えるなら剣道をしてきた人にサッカーを教えるくらい的外れになる可能性があります。
――年齢の差もありますし、それぞれ育ってきた文化も異なりますから、確かに「異なる競技をしてきた人」が職場に集まっていると考えたほうが腑に落ちるかもしれませんね。
こうした問題はスキルの面だけでなく、感覚の面でも起きています。例えば、昭和世代のクリエイターが女性向けCMのディレクションをした際に、「もっと女性はおしとやかに描いた方がいい」といったら明らかにミスディレクションです。社会環境の変化はテクノロジー面だけでなく、人間のモラルも変えました。
変化は広告業界だけなくあらゆる業界で起きています。例えば振る舞いについても、以前は会議中に携帯電話を使用することは失礼な行為とみられていました。一方、スマートフォンに置き換わった今では、マルチタスクができる優秀な人という見られ方をされます。まず年長者はルールが変わったことを理解し、受け入れないといけません。若手を単に「経験のない人」と捉えるのではなく、自分たちとは違う種類のゲームをやってきた人だと考えて接しないと、いろいろな場面で不具合が生じると思います。
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