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トヨタは「人間の顔をした会社」に変われるか? 「パワハラ再発防止策」を読み解く河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)

» 2021年06月25日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 報道によれば、豊田章男社長は男性の労災認定が報じられた19年11月と今年4月の計2回、遺族と直接面会し、陳謝した上で、「(再発防止の)仕組みは作ったが完成ではなく、改善を続ける。二度とこうしたことを起こさせない」と述べたそうです。

 パワハラ問題はこれまでも繰り返し書き続けていますが、パワハラは個人の問題ではなく「組織」の問題です。「組織的なパワハラ」であることをトップ自身が認め、組織改革を実行しない限り、パワハラは繰り返されます。それは「人」の軽視であり、カネと株価しか見ないトップが「人の命」を軽んじた末の愚行です。

 冒頭の奥田氏は「リストラするなら経営者は腹を切れ」との名言を残しました。そのトヨタで、パワハラが繰り返し行われていたという事実は、極めて残念なことです。

 しかし、今回豊田社長が自ら率先して防止策に乗り出し、「二度とこうしたことを起こさない」と遺族に約束したことは、生半可な気持ちでできることではありません。「絶対に変える」という覚悟を感じますし、後を絶たないパワハラ問題に「新しい風」をなることを期待したいと、個人的には思っています。願いも込めて。

 一方で「パワハラと指導の境目が分からない」「部下を育てるのが難しい時代になってしまった」と嘆くトップが多いのも事実です。

 私自身は、「パワハラがなくなれば会社や社員が元気になるのではない。会社も社員も元気な会社にはパワハラはない」が持論です。つまり、パワハラをなくすことと、社員のパフォーマンスを引き上げることは、全くの同義です。

 そこで今回は、トヨタが公表したパワハラ対策の良い点と欠けている点から、「元気な会社」について考えてみようと思います。

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