インタビュー
» 2021年06月26日 08時00分 公開

1983年出版の本が、2020年に6万5000部も売れた理由 猪瀬直樹が「ベストセラーを生み出す情報整理術」を語るスマホとクラウドで一元化(1/4 ページ)

40年近く経過して新装版として再び書店に並んだ猪瀬直樹著の『昭和16年夏の敗戦』が、2020年に年間で6万部以上売れた。その秘密に迫る。そこには猪瀬氏の「公」の思想と、「流行に左右されない」情報収集術があった。

[星裕方,ITmedia]

 書店に並ぶ平積みの書籍の数々――。そこは社会の流行を映し出す「鏡」だといわれる。ロジカル・シンキング、話し方からDX(デジタル・トランスフォーメーション)の関連書籍に至るまで多くの見出しが並ぶ。

 その中に、異彩を放つタイトルがあった。『昭和16年夏の敗戦』(中公文庫)――1983年に上梓された、作家であり元東京都知事である猪瀬直樹氏の著書だ。驚くべきは、40年近く経過して新装版として再び書店に並んだこの本が、2020年に年間で6万部以上売れたことだ。新装版といっても変わっているのは表紙だけで、内容はほぼ変わっていない。

 猪瀬直樹氏は、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した代表作『ミカドの肖像』(小学館)をはじめとして、これまで数多くの著書から近代の日本を描き出してきた。猪瀬氏は時折、自著について「自分の本は古くならないんだ」と胸を張る。『昭和16年夏の敗戦』はまさに、それを証明して見せた。

 時代が大きく変化した現代において、なぜ同著は示唆を生み出し続けることができるのか。同氏へのインタビューによって、その秘密に迫った。そこには猪瀬氏の「公」の思想と、「流行に左右されない」情報収集術があった。

phot 猪瀬直樹(いのせ・なおき) 1946年長野県生まれ。作家。87年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。96年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞受賞。東京大学客員教授、東京工業大学特任教授を歴任。2002年、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。07年、東京都副知事に任命される。12年、東京都知事に就任。13年、辞任。15年、大阪府・市特別顧問就任。主な著書に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『黒船の世紀』『ペルソナ 三島由紀夫伝』『民警』のほか、『日本の近代 猪瀬直樹著作集』がある。近著に『昭和23年冬の暗号』 (中公文庫)など(撮影:山本宏樹)

1983年出版の本が、6万部以上売れた理由

 『昭和16年夏の敗戦』は、猪瀬直樹氏のデビュー作『天皇の影法師』(朝日新聞社)と同年、1983年に上梓された著書だ。当時の日本はNHK連続テレビドラマ小説『おしん』が国民的ムーブメントとなり、東京ディズニーランドが開業するなど明るいニュースも多かった。

 翌年には戦後の高度経済成長を分析した米国の社会学者エズラ・ヴォーゲルによる『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(阪急コミュニケーションズ)が国内でも出版され、日本経済の黄金期に国全体が浮かれていた時代でもあった。

 そんな当時に本書が描き出したのは、事前の敗戦シミュレーションがあったにもかかわらず、日米開戦に突き進む「意思決定」をしてしまった、第二次世界大戦の火蓋が切られる直前期の日本の姿だ。猪瀬氏は、「(発売当初は)あんまり売れなかったんですよ」と当時を振り返る。

 ところが、それから40年弱、2020年に中公文庫の新装版として出版された『昭和16年夏の敗戦』は、発売から数カ月で6万5000部を売り上げた。「自分の本は古くならない」と語る猪瀬氏は、この要因を「戦争の話のようでいて、いまのビジネス社会の人々が直面している意思決定の在り方に通底しているから」と分析する。

phot 猪瀬氏は昨年の『昭和16年夏の敗戦』ヒットの要因を「いまのビジネス社会の人々が直面している意思決定の在り方に通底しているから」と分析する
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