オリンピックで「人流」は増加するのか 見落とされている過去の“事実”長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)

» 2021年06月29日 09時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

プロ野球やJリーグは有観客

 オリンピックを会場で観戦する人の数は、テレビを見る人に比べれば一握りだ。しかし、1万人までの有観客にして問題はないのかとの懸念もある。尾身氏自身、そう訴えている。

 ところが、プロスポーツは観客を入れ始めている。もちろん、入場制限など感染症対策をしっかり行った上のことだ。

阪神甲子園球場では、夏の高校野球の開催が予定されている(出所:阪神ロケーションサービス公式Webサイト)

 例えば、6月18日(金)、19日(土)、20日(日)、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開催された阪神対巨人戦では、観客数はそれぞれ7641人、7506人、8751人だった。甲子園球場の収容人数は4万7508人であり、かなり絞っての有観客開催であった。

 同じく6月18〜21日に、仙台市の楽天生命パーク宮城球場で開催された楽天対オリックス戦では、観客数はそれぞれ1万976人、1万3091人、5396人だった。宮城球場の収容人数は、3万508人である。

茨城県立カシマサッカースタジアムはオリンピック会場の1つ(出所:鹿島アントラーズ公式Webサイト)

 サッカーのJ1リーグはどうか。6月20日に茨城県鹿嶋市の茨城県立カシマサッカースタジアムで開催された鹿島アントラーズ対ベガルタ仙台戦では、入場者数は9312人のだった。同スタジアムの収容人数は4万728人だ。

 大相撲5月場所は、東京都墨田区の両国国技館で開催された。3日目までは無観客だったが、4日目(5月12日以降)は規制が緩和され、千秋楽の23日まで上限5000人とする有観客で開催した。両国国技館の収容人数は、1万1098人である。

両国国技館はオリンピック会場の1つ(出所:鹿島建設公式Webサイト)

 プロ野球、Jリーグ、大相撲と、それぞれ数千から1万程度に限定した有観客で開催し、大きな問題があったとは聞いていない。

 尾身氏は、オリンピックは特別に国民が熱狂する行事と考えているようだが、実態はひいきのプロ野球チームが優勝することに興奮する人のほうが多いのではないか。例えば、2000年のシドニーオリンピックではマラソン女子で高橋尚子選手が、日本の陸上女子で初の金メダルを獲得した。一方、関東の翌日のスポーツ紙1面は、たまたま同日に重なった「巨人優勝」一色だった。

新国立競技場(出所:高砂熱学工業公式Webサイト)

 上限1万人で定員の50%以内といった、オリンピック各会場の観客数の取り決めは、上記のような各取り組みで検証済みと主催者側は考えるだろう。最大会場の国立競技場は6万8000人を収容するので、1万人を入れても、間隔を空けて座ればスカスカだ。

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