不正、パワハラ、発言撤回! 三菱電機の腐った組織風土は変わるのか河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)

» 2021年07月09日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 杉山武史社長は7月2日の記者会見で、「顧客との関係より自分たちの論理を優先する業務の進め方をしていた」「組織的な不正行為だったと認めざるを得ない」と陳謝し、引責辞任を表明しました。しかし翌日、記者会見の内容の一部が「事実と異なる発言だった」と訂正する、前代未聞の事態が起きてしまったのです。

 杉山氏は会見で、3日前の6月29日の株主総会での不正の報告を見送った判断を問われ、「(総会の)前日に取締役会の皆さんにも諮った(はかった)」と説明しました。ところが実際には、「取締役会は開かれておらず、協議も行われていなかった」。まったくもって、お粗末としかいいようがありません。

三菱電機のニュースリリースの一部

 杉山氏は、「私が社長の任にあり続けることが、顧客や株主など全てのステークホルダーから理解を得られるのか。新体制で信頼回復に取り組む必要がある」と語っていたのに、なぜ、やってもいないことをやったと弁明したのでしょうか。

 まさか、黙っておけばバレないと思った? はたまた取締役会の夢でも見ていたのか?

 日本を代表する企業のトップが、開いてもない取締役会を開いたと、なぜ、言ったのか? 

 ぜひとも杉山氏に説明していただきたいし、あらためて、株主たちに「不正報告」をしなかった本当の理由もお聞かせいただきたい。が、残念ながらそういった“動き”は全くありません。

 三菱電機は、日本国内“業績4位”の電機メーカーです。つまるところ、それを支えているのは、現場で酷使された社員であり、顧客と株主を軽んじて“搾取されたカネ”だった。その隠されたリアルが、今回の“事件”で暴かれてしまったのです。

 今回の不正事件に関して行われた長崎製作所の社内の聞き取り調査では、課長級を含めて約30人が検査不正を把握していたことが分かっています(7月2日時点)。件のパワハラ事件でも周りの社員たちが気がついていたので、「見て見ないふりする組織風土」が、会社を瀕死寸前にまで追い込んだと考えて問題ないでしょう。

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