一方、自己評価と役職(役員、部長、課長など10段階)との関係を分析した結果、役職が高い人ほど、運のよさへの自信、能力への自信、交渉力、決断力、批判精神などの得点が高いことが示されました。
さて、ここからが論文の肝です。35項目の心理特性と昇進との関連について、統計的な分析を行ったところ、次のような「人」たちが、昇進していたことが分かりました。
昇進には、
さらに、
──という、なんとも残念な結果が明かされたのです。
要するに、「強い責任感は、昇進を妨げる可能性が高い」。至極ストレートに言い換えると、「無責任な人ほど出世する」ことが分かった。本来なら、階層組織の上にいけばいくほど「責任感」が求められるはずなのに、現実は全く逆だったのです。
責任感の強さがなぜ、マイナスに作用するのでしょうか?
理由の1つは正義感です。 責任感の高い人は正義感も強いため、自らの責任に加え、他者への責任追及も厳しい。 組織で起こる問題の多くは、たった一人の人物が原因ではありません。つまり誰かが正直に告白することで困る人も少なからずおり、正義の人は厄介な存在なのです。
反対に、うそを突き通す人のおかげで責任追求を免れる人も存在します。 日常の業務の中にも多かれ少なかれうそや責任逃れが横行しており、そういう人は案外、 上司や周囲から重宝がられます。うそつき上手は、上からの「引き」で出世する可能性が高まるわけです。
また、論文では調査対象とした6社別の分析も行っているのですが、東芝だけ有意に「責任感の高さはマイナス」となり、「昇進との関連性の強さ」を伺わせる結果が示されました。東芝も、すったもんだがありましたよね。つい先日も。
この調査では、三菱電機の社員は対象になっていませんが、 東芝だけ。そう東芝だけが「責任感」がマイナスとは、その後の末路を予測している結果に思えてなりません。
杉山社長は2日の記者会見で、「後任にふさわしい人材は三菱電機内に十分いる」と話し、社内から選びたい考えを示しました。しかし、腐りきった風土を変えるには、“鳥の視座”をもつ人を入れないことには到底無理です。いつの時代も、組織を変えるのは、社外のよそ者であり、権力を恐れない若者であり、社内から見れば「ノーテンキなばか者」だったりするものです。
三菱電機の経営陣に、「本気で組織を変える覚悟」はあるのか。それは、次期社長が誰になるかで明らかになることでしょう。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)がある。
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