不正、パワハラ、発言撤回! 三菱電機の腐った組織風土は変わるのか河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)

» 2021年07月09日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 組織風土とは、「その組織に所属する多くの人に共通したものの見方や考え方、行動特性」で、長い年月をかけて培われ、組織に深く根ざし、組織を包んでいる目に見えない“空気”のようなもの。

 ミス、不正、パワハラ、不祥事が起きると、個人や職員の資質が問題にされがちですが、働く人たちの倫理観はおおむね、組織風土に左右されます。

 腐った組織風土は、人間の良心と魂をむしばみます。組織への帰属意識が高ければ高いほど、その傷は深く、痛手を負いやすいことが分かっています。

 米国で1万4500人以上を対象に行われた調査では、4人に1人が職場で「悪いと分かっていること」を強いられるプレッシャーを経験していると回答しました(イェール大学センター・フォー・エモーショナル・インテリジェンスとファース財団の共同調査)。

 この状況が続くと、プレッシャーを感じなくなり、違法すれすれでも「まだ黒じゃない」と当人は思い込むようになり、「慣習的に先輩たちがやってきたことだから」と何の疑問も持たなくなってしまうのです。

 仮に、「それはおかしい」などと声を上げようものなら、「アイツは組織の論理が分かっていない」だの、「めんどくさいヤツ」呼ばわりされ、「厄介者は追い出せ!」と排除される。

始めは悪いと思っていても、慣れると疑問を持たなくなってしまう(提供:ゲッティイメージズ)

 結果的に、「おかしい」を「おかしい」と言わない傍観者が量産され、「おかしい」が日常になる。これは実に恐ろしいことです。組織を包む“空気”の圧は、とんでもなく手ごわい代物なのです。

 三菱電機の検査不正が始まったとされる80年代、日本の大企業の中間管理職の昇進に関する興味深い調査結果が報告されました。経営学者の清水龍瑩氏(故人)が行った調査で、「わが国大企業の中間管理職とその昇進」という論文にまとめられています。

 調査対象は、日本電気、日立製作所、東芝、三井物産、三菱商事、日商岩井(現・双日)。つまり昭和の日本を代表する「メーカー」と「商社」に勤める、40歳代の社員、計1470人。 調査では、学歴や出身地、体格、趣味、結婚・子どもの有無に加え、「中間管理職の考え方・行動 に関する質問項目」を用い、昇進との関連を検討しました。

 調査の結果、日本の大企業の中間管理職は、「やる気があり、自分の能力に自信があり、会社に対する批判精神も強く、ものの見方が柔軟で、部下の思いやりがあり、部下の能力開発、交渉力、適応力などが高い。上司に積極的にゴマスリはしない」と自己評価していました。

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