コラム
» 2021年07月29日 05時00分 公開

なぜ? なかなか増えない女性管理職 ファクトで読み解く「歪さ」と「根深さ」政府目標も後ろ倒しに(4/4 ページ)

[川上敬太郎,ITmedia]
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(3)職場の人員構成

 管理職として登用されるのは、それなりに職場での実績があり、能力が認められている人材であるはずです。しかし、いざ管理職に登用しようとしたときに女性が離職していれば、結果的に女性の比率は下がることになります。

 男女共同参画白書には、女性の労働力率を縦軸、年齢階級を横軸にしたグラフが掲載されています。

 20年のグラフを見ると、25〜29歳の労働力率85.9%をピークに下降し、35〜39歳の76.0%を底に再び上昇しています。こうしたグラフの特徴は、その形状から“M字カーブ”と呼ばれます。

 大学を卒業して22歳で社会に出た人の場合、M字カーブの底となっている35〜39歳は入社14〜18年目に当たります。管理職に登用されたり、昇格対象となる可能性が十分ありうる年代層ですが、ピーク時と比較するとこの層の労働力率が10ポイント近く減少しています。

 それだけこの年代の女性が職場から離れてしまっているということです。この年代の女性が離職してしまう背景にあるのは、(1)と同様に“家事育児の主体は女性”という性別役割分業です。

 結果、人員構成上、管理職候補となる女性の母数は少なくなり、その分女性の管理職比率が下がって男性の比率が上がることになります。

(4)職場の偏見

 (2)で指摘した「女性は管理職に向かない」という誤った思い込みや、「女性は仕事より家事優先」「女性はすぐ仕事を休む」など女性に対するイメージが一方的に決めつけられてしまうと、偏見となって職場内に浸透してしまいかねません。それらの偏見は、管理職への登用や昇格判断において女性にとってマイナスに作用し、役職が上がるにつれて女性比率が下降する原因となっていくはずです。

 ここでもネックになっているのが、性別役割分業意識です。男性育休を推奨するなどの施策がとられてはいますが、職場内の空気が、家事育児の主体は女性という暗黙の役割分担意識に支配されている間は偏見も残り続けてしまうはずです。

 以上見てきたように、「正社員に占める女性比率の低さ」と「性別役割分業意識」は、女性管理職比率増加を妨げるボトルネックとなっています。それらは、一朝一夕で解決することのできない、根深い問題です。

女性管理職比率はこれまでの「ツケ」

 先ほど紹介した男女共同参画白書のグラフで「係長級」の女性比率は19年から20年にかけて2%程度上昇しました。同じく男女共同参画白書に掲載されている海外比較のグラフでは、日本の女性管理職比率は13.3%です。仮に今後、「係長級」の伸び率同様に、年2%程度のペースで女性管理職比率が上昇したとしても、政府目標の30%到達までには8〜9年を要することになります。

 「それなら2030年までに目標達成できるからいいじゃないか」という見方もあるかもしれませんが、グラフで比較されている他国の中で日本は既に最下位です。今後も長く他国に後れを取り続けることになります。また、必ず2%ずつ女性管理職比率が上昇する保証があるわけでもありません。

 もちろん、女性管理職比率が他国より低かったとしても、それで人々が豊かに生活を営むことができ、企業活動においても支障が生じないのであれば問題にする必要はないのかもしれません。また、女性に限らず、誰もが管理職を目指さなければならないわけでもありません。

 しかし、管理職を希望する女性が願いをかなえづらかったり、女性が自らの可能性を広げにくかったりする環境があるのであれば、それは決して望ましい社会の在り方とはいえないはずです。

画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ

 女性管理職比率を巡る「歪さ」は、これまでの社会が残した根深い問題をはらむ構造上のツケです。一日も早くこのツケを払い終えるのか、それともツケを残したまま、また次の世代へと引き継いでしまうのか。未来を担う子どもたちに、どんな社会を形づくってバトンを渡してあげられるのかを考える上で、女性管理職比率は象徴的な指標の一つなのだと思います。

著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)

ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”の声のべ3万5000人以上を調査したレポートは200本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


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