売り切れ続出の「ファミマソックス」はなぜ誕生したのか 目指したのは“雨でぬれた時に買う”商品からの脱却日本人の生活様式を変えたい(3/4 ページ)

» 2021年07月29日 06時00分 公開
[上間貴大ITmedia]

社内の人間では気付かなかった3本線の「アート」

 コンビニエンスウェアは現在70アイテムを展開。その中でもひときわ話題となっている商品が、先述した「ラインソックス」だ。ありそうでなかったファミマの靴下。吉村氏は「共同開発した落合氏ならではのこだわりがあった」と話す。

 「毎日ロゴを見ているファミマ社員にとって、この柄を展開することはある種の挑戦で、社内では「ベーシックな商品しか売れないのでは」といった声もあった。しかし落合氏は、『3本線でファミマだとイメージできるデザインはカルチャーに近く、それだけでアートになっている』との感覚を強く持っていた。議論を交わす中で、ブランドを象徴する商品として展開することになった」

見ただけで「ファミマ」と感じるデザイン(出所:プレスリリース)

 同社の「挑戦」だったラインソックスはSNSを中心に話題に。20年に関西エリアで先行発売した際には「ファミマがファミマ柄の靴下売ってるの良すぎる」というツイートに5万件以上のいいねがついた。

 全国展開以降は、一時品切れする店も相次ぎ「数軒回ってやっと発見した」といった声や、中高生を中心に友人と「おそろいコーデ」を楽しむ写真が多く掲載されている。インスタグラムでは「#ファミマソックス」とタグ付けした写真が3700件以上投稿され、TikTokでは500万回以上再生されている。

 そのような影響もあって、インナーの購買層に変化が出てきている。先述した通り、これまでは金曜、土曜の深夜に40〜50代の男性の購入率が高かったが、インナーソックスなどは土日の売り上げが大きく、より若い層の購入が目立つようになった。

 また、アウターTシャツも、テレワークの普及によるビジネスウェアのカジュアル化が後押しし、売り上げは好調だ。SNSで話題となった商品や世界的デザイナーのアイテムが仕事や学校帰りに立ち寄るファミマで買える。このような利便性もあって、「何でもいいからその場しのぎに買う」ものから「欲しい商品だから買う」といった流れに変化しつつあるようだ。

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