攻める総務

オフィスを整理・縮小するとき、どんな経理処理が必要か?(1/3 ページ)

» 2021年08月03日 07時00分 公開
[企業実務]

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オフィスを整理・縮小する企業が増えています。オフィスを整理・縮小する際の会計処理や消費税の取り扱いについて確認します。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

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 本記事は、2021年8月号に掲載された「オフィスの整理・縮小にまつわる経理処理を確認する」を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集し、転載したものです。


敷金の経理処理

(1)原状回復費として返還されない敷金

 事業用の賃貸借契約においては、一般的に借主が原状回復費を負担するので、預けていた敷金から原状回復費相当額を差し引いた金額の返還を受けます。

 実際は、借主が行う原状回復工事を貸主が代わりに行うので、借主からすると貸主から役務提供を受けていることになります。そのため、退去時に敷金から差し引かれる原状回復費相当額は、役務提供の対価として消費税の課税対象になります。

(2)敷金償却として返還されない敷金

 契約書に「退去時に敷金の25%を償却した金額を返還する」などの記載がされているのであれば、契約時点で敷金の25%は返還されないことが確定します。敷金償却として返還されない敷金については、オフィスを借りるための対価と考えるので、返還されないことが確定した契約時点で消費税の課税対象になります。

 返還されない敷金償却部分は、税法上の繰延資産として取り扱うため、20万円未満であれば一時の経費、20万円以上であれば長期前払費用として資産計上します。この長期前払費用として資産計上している金額は5年で償却します。賃借期間が5年未満で契約更新時に更新料等の支払いをするのであれば、賃借期間で償却することもできます。

 契約を解除した場合には、解除した事業年度において未償却残高の全てを償却します。なお、礼金も敷金償却と同様の取扱いをします(図表1)。

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(3)違約金として返還されない敷金

 オフィスの借主が契約期間の途中で解約を申し出る場合、契約内容によっては、敷金から違約金を引かれることがあります。解約により発生する違約金は、本来ならば貸主が得られたはずの利益を借主が補填するためのものであるため、損害賠償の一種として消費税は不課税です。違約金は、原則として双方合意のうえ、金額が確定した事業年度の経費になります。

 なお、中途解約をしたにもかかわらず、明け渡し遅滞が生じると別途違約金が発生する場合もあります。その場合、違約金が逸失利益の補填(ほてん)として支払われるものではなく、契約期間を延長して建物を賃借した対価として支払われるものになるので、消費税の課税対象になります(図表2)。

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