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オフィスを整理・縮小するとき、どんな経理処理が必要か?(2/3 ページ)

» 2021年08月03日 07時00分 公開
[企業実務]

固定資産を処分する際の経理処理

(1)売却

 固定資産を売却する際の注意点は、「損得に関係なく売却金額に消費税が課税される」点です(例外として土地の売却は非課税)。

 貸借対照表上に資産計上している固定資産を売却する場合には、売却時の固定資産の帳簿価額と売却金額の差額を損益として認識します。単価が10万円未満の固定資産、10万円以上30万円未満のもので少額減価償却資産の特例の適用を受けている固定資産など、購入時に全額費用計上した固定資産を売却する場合は、帳簿価額がないため売却金額と同額が収益になります(図表3)。

 なお、一般的な会計ソフトは、固定資産の売却仕訳を入力する際、消費税を正しく自動認識してくれないこともあるので、仕訳に工夫が必要です。

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(2)廃棄

 固定資産を廃棄する場合、固定資産の帳簿価額を固定資産除却損として損失計上できます。資産の譲渡等に該当しないため消費税は不課税です(図表4)。

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 廃棄するための費用も固定資産除却損として計上できます。廃棄費用は、廃棄という役務提供を受けるので消費税の課税対象です。

 固定資産を廃棄する際は、適切な経理処理であることを証明するために「廃棄の証拠を残す」ことが重要です。「廃棄証明書」「廃棄した固定資産の写真」などを残しておきましょう。業者に依頼せずに社内で処分する場合は、「固定資産の廃棄報告書」を作成します。「廃棄する固定資産の名称、数量、廃棄理由」などを記載します。

(3)有姿除却

 すぐに廃棄できない場合は、有姿除却という選択もあります。

 有姿除却は、実際に廃棄をしていなくても、「使用を廃止して今後使用する可能性がない固定資産」については、帳簿価額から処分見込価額(買い取り価額)を差し引いた金額を損失にできます。価値が付かず処分見込価額がない場合には、帳簿価額を損失計上します(図表5)。

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 有姿除却は実際に廃棄したわけではないので、損失計上の要件である「使用廃止」「今後使用する可能性がない」ことを客観的に証明できることが前提です。有姿除却に至った経緯や理由を記載した書類を残す必要があります。証明できない場合は、実際に廃棄した段階で損失にしましょう。

(4)ソフトウェアの除却

 ソフトウェアのような無形固定資産も、機械のような有形固定資産と原則は同じです。

 損失計上するには、実際に廃棄をした事実の証明が必要です。しかし、ソフトウェアは無形固定資産であるため、廃棄の事実を物理的に証明するのは困難です。そこで、「事業供用しないことが明らかな場合」には除却することができるという規定があります。

 自社利用のソフトウェアの場合は、「業務の廃止」「ハードウェアやオペレーティングシステムの変更」により「ソフトウェアを利用しなくなったことが明らかな場合」に除却することができます。

 販売用のソフトウェアの原本の場合は、「新製品の出現」や「バージョンアップ」により、「今後販売しないことが明らかな場合」に除却することができます。

 いずれにしても、利用中止、開発中止に至る経緯が分かる根拠資料を準備し、事業供用しないことが明らかな事実や時期を証明できるようにする必要があります。

(5)一括償却資産の売却と廃棄

 取得価額10万円以上20万円未満の固定資産は、一括償却資産として処理することができます。一括償却資産は通常の固定資産とは違い1年間に取得した一括償却資産の全てを1つの資産と見なして管理します。一括償却資産を売却しても廃棄しても、3年間で帳簿価額がゼロになるように3分の1ずつ均等償却します。そのため売却した際は売却額の全てが収益になります。廃棄した際は仕訳をしません(図表6)。

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